お気に召すまま 
《15》









「………ないな」
真田が眉を顰めた。
「そやろ? 普通俺たちの年代だとないよな。……だから、ほんと困るわ」
「自分の身体となればまた別なのではないか? 感覚があるわけだからな」
「まぁ、そうなんやけど、それがまた変な感じでなァ……なぁ、ちょっと触ってみてくれるか?」
そう言って忍足は立ち上がると、真田の返答を待たずに向かいのソファの真田の隣に座った。
立ち上がった時にワンピースをその場に脱ぎ捨て、ブラとショーツだけになってである。
隣に来た忍足に、真田がぎょっとしたように瞳を見開いた。
「こんなんなってしもてな、すごい違和感なんや。鏡とかも見られへん…」
はぁ、と溜息を吐き、首を振ってみせる。
「身体もなぁ、変に柔らかいし………な?」
そう言って真田の無骨な大きな手を取って、自分の乳房に触れさせてみる。
真田が盛大に眉を顰めた。
無骨な手がびくり、と震えるのが分かって、忍足はなんだか可笑しくなった。
(…真田でも結構びくつくことあるんやな…)
立海大の真田と言えば、どんな時でも泰然自若というか傲岸不遜というか-------まぁ、そんな小難しい四字熟語が似合いそうな男なのだが。
ちらちら横目で見る今の真田は、困惑しきっているようで、少々目許まで赤くしている。
(純情なんやなぁ。跡部とはえらい違いや…)
跡部の時は自分がなんだかあれよあれよと言う間に翻弄されてしまったが。
真田相手だと、自分の方がリードできそうである。
なんとなく嬉しくなる。
なんだか緊張が解けて、忍足はもっと大胆な行動に出た。
真田の反対の方の手も取ると、その手を自分のショーツの中に押し込んだのである。
「………!」
さすがにぎょっとしたようで、真田が息を飲んで忍足を見つめてきた。
「こことかすごい違うやろ? 朝起きてここになんもないって分かった時の俺の気持ち……察してくれるか?」
「そ、そうだな……」
声が心なし上擦っているようである。
「跡部なんかはそのへん見慣れてとるみたいで、俺がそう言っても全然同意してくれへんかったんやけど、真田なら同意してくれるよな?」
「……見たのか?」
「……怖くて見てないんやけど…」
「それはそうだな…」
「真田が触ってるトコ、どんな感じや…?」
忍足はもう一歩押し進めてみた。
真田の手をぐにゅ、と自分の柔らかな肉襞に埋め込んでみたのだ。
びくっと真田が身動ぐ。
「なんもないと、不安でなァ…」
「……忍足……」
いくら真面目で品行方正な男でも、直接的な刺激と、それから先だって飲まされている媚薬の効き目には敵わない。
真田の声が押し殺したように響いてきたので、忍足はよし、と思った。
困惑している振りをして、真田に凭れ掛かる。
太股を開いて真田の指を更に花弁の中に押し込み、ショーツ越しに上から押さえ込む。
真田の首筋に溜息を吐いて唇を付け、たわわな乳房をぎゅっと真田の厚い胸板に押しつける。
「……離れろ……」
「…こうしとると安心するんや。……なぁ、真田は俺にこうされるの、いやか?」
「…………」
理性を全部動員して耐えているのだろうか。
真田の眉間には深い皺が寄っていた。
唇を苦しげに引き結び、修行僧のように堪えている。
(なんや、こういう顔、そそるなァ……)
性衝動を、無理矢理理性で抑えようとしている所が、意外に可愛い。
自分たちぐらいの年齢では、性衝動を抑えることなど、殆ど不可能に近いのだが。
しかも真田は媚薬を飲まされているのだ。
真田の苦悩が分かるだけに、さらにぞくぞくと嬉しくなって、忍足は自分も興奮するのを感じた。
真田の指の埋め込まれている部分が蕩けるように熱くなってきて、うずうずしてたまらなくなる。
「なぁ、真田、……さっき、女になった時になんでも体験した方がいいって言ったやろ…? なんや、俺……いろいろ経験したくなってきたんやけど…」
たわわな乳房を擦りつけながら、耳元に囁く。
「な、………抱いてくれへん……?」
掠れた声で誘ってみる。
「…………」
「セックス………してみたいんやけど……」
忍足は更に押してみた。
「せっかく女になったんやし………真田なら、俺の我が儘聞いてくれるかと思うて……いやか?」
吐息混じりに甘く囁き、真田の首筋に唇を押し当てて舌を出してぬるりと舐めてみる。
暫く固まっていた真田が、喉をごくりと鳴らして不意に動いた。
ソファにどさり、と忍足を押し倒して、忍足が上を向いた所に噛みつくように口付けてくる。
「どうなっても知らんぞ…」
厚めの唇が強く押しつけられ、弾力のある熱く濡れた感触にうっとりとしていると、すっとそれが離れ、掠れた低い声で囁かれる。
(どうなってもって、…それは真田の事やな…)
じんじんと痺れるような口付けの快感に陶酔しながらも、忍足はそんな風に思って可笑しくなった。
が、表には出さずに、真田を見上げて瞳を潤ませる。
「ええって、真田……好きなように、してや…」
少々甘えるような声が出る。
なんだか自分が自分でないようでびっくりだ。
(こんな事できるんやな、俺…)
結構意外だった。
跡部に影響されて、悪い人間になってきているのだろうか。
などと思ったりもしたが、次の瞬間、
「忍足………」
熱い吐息と共に囁いて、真田が太い腕を自分の背中に回して強く抱き締めてきたので、とりあえずそういう事を考えるのは中断した。
(せっかく真田とやるんやから、こっちに集中や…)
真田の熱い息づかいを聞きつつ、自分もすっかり興奮したのが分かって、忍足は心の中で苦笑した。













忍足を押し倒したのはいいものの、やはり真田は戸惑っているようだった。
媚薬で身体の方はもうどうにもならないほど興奮しているようで、制服のズボンを押し上げて固く漲った肉塊が忍足の太腿にびんびん当たるのだが。
(これで我慢しとったら辛いやろな…)
真田の厚い唇に自分のそれを押しつけ、角度を変えて深く合わせ、舌を差し入れながら忍足は考えた。
きっと口付けも初体験なのだろうが、真田は意外と上手かった。
忍足に合わせて舌を絡ませ、絡み合ったそれを微妙に吸いあげながら、忍足の喉の奥まで舌を伸ばしてくる。
ぬめった舌の感触に、脳の芯が痺れてきた。
それとともに、太腿に当たる真田の局部が、更に固く体積を増してくる。
(真田のここ……跡部よりでかいよな……痛いやろか……)
などと少々怖い気持ちもあるのだが、それよりも、真田のこれが自分の中に…と考えただけで、ずきん、と腹の奧が疼いて、とろとろに蕩けてくるのが分かる。
早く、見たい。
見て、触れて、…これで貫かれて、……体内でその太さと熱を感じたい。
震えるような欲望が沸き上がってきて、忍足は狼狽した。
(おいおい、俺もいい加減興奮しすぎや………まずいまずい……)
なんとか自分をコントロールしなければ、と理性を奮い立たせる。
そんな忍足の内心を知ってか知らずか、真田が深い口付けから顔を上げると、切れ長の焦げ茶の瞳をすっと眇め、食いつくような目つきで忍足を見てきた。
「…あ、なぁ……服、脱いでや…」
「あ、あぁ、そうだな……」
恐る恐る小さな声でそう言うと、はっとしたように真田が上体を起こし立ち上がる。
着ていた制服の上下をもどかしげに脱ぐ様子を、忍足はどきどきしながら眺めた。
(さすが真田や………筋肉、ようついとるなぁ……)
決して太っているわけではないのだが、要所要所に逞しく筋肉がつき、かなり鍛えている事が一目で見て取れる。
元々骨太の体型の上に、更に鋼のように筋肉が張り詰めていて、忍足は目を奪われた。
同性としても、垂涎の的だ。
(俺もあんな感じで筋肉つけとけば、もっと強うなれるやろか……)
などとちょっと呆けている間に、真田は下着まで脱いでしまった。
忍足に背を向けて脱いでいたので、忍足の目には真田の引き締まった尻が見え、臀筋のうねりに息を飲んでいた所に、真田が自分の方に向いてきた。
(…………!)
---------------でかい。太い。長い。
真田のペニスは既に勃起して、黒々とした陰毛を押し上げて腹に着くほどに反り返っていた。
えらの張った大きな亀頭がびくびくと脈打ち、濃い色をした先端から透明な先走りが溢れ垂れている。
(………さすが真田や…)
先ほどからその言葉しか出てこないが、さすがとしか言いようがなかった。
跡部や自分のそれも他人と比べて遜色ないとは思うし、跡部のペニスなど、形も良くしなやかで固かったが…。
(跡部、見とるんやろか……あいつ、負けたとか悔しがっとるやろな…)
真田のペニスは別格であった。
これで中学生か、と思うほど発達して、色と言い形と言い、鍛えた鋼のようである。
堅く漲って、天を向いてそそり立ち、赤銅色でふしぶしが節くれ立っている。
(…これで童貞なんか………なんや勿体ない気ぃ、するわ……)
などと思いながらまじまじと見つめていると、真田がぎし、とソファを軋ませて体重をかけ、忍足の肩を包み込むように腕を回して抱き締めてきた。
「忍足……」
低く響く美声で耳に息を吹き込まれて、ぞくぞくっと背筋に戦慄が走る。
それとともに下半身が急に熱湯にでも浸かったように熱くなり、じいん、と疼いた。
とろり、と下腹部から熱い愛液が溢れ出るのが分かる。
「な、なぁ……ここじゃ狭いし、ベッド、…行かへん?」
真田の太く逞しい腕に抱き締められただけで、身体がどこまでも柔らかくふやけていくようである。
「…そうだな……」
真田の響くテノールが耳元で聞こえたかと思うと次の瞬間、ふわっと身体が浮いた。
(うわ…)















真田はでかくて太くて長いことにしてください(笑)