一方真田は、忍足に勧められるままにシャワー室へ入り、バスタブをまたいで狭い中に身体を押し込めた。
シャワーのコックを捻って熱いお湯を頭から浴びる。
媚薬のせいで理性のたがが外れた状態のままではあったが、熱いお湯を浴びていると、少しは理性が戻ってきた。
(どうしてあんな事を……)
ぽたぽたとしずくを垂らしながら、真田は太い眉を顰めた。
普段の自分からは到底考えられないような、ふしだらな行動。
いくら誘われたとはいえ……。
だが、気持ち良くてまるで天国にでも上るような心地だったのは確かだ。
自分の身体の一部分が他人の中に入る、というだけで、自慰とは到底比べものにならないほどの快感だった。
思い出すと、また身体が火照ってくる。
「………」
頭を振ってシャワーの勢いを強くし、頭の中の邪念を振り払うようにシャワーを浴びると、真田は大きく息を吐いて、バスタオルで乱暴にごしごしと身体を擦った。
あらかた拭くと、タオルを腰に巻いて、シャワー室を出る。
と、部屋には忍足の姿はなく、代わりに跡部がいた。
「……跡部」
ここは跡部の家だから、いて当然なのだが、見た途端にどきん、とする。
無性に恥ずかしかった。
渋面を作って視線を逸らしたが、跡部は気にしていないようでごく普通の調子で話しかけてきた。
「すまねぇな、忍足が迷惑かけたみたいでな」
「…いや……」
「あいつ、オンナになってからちょっと情緒不安定でな。……なんだか、お前に逢わす顔がないからっつうんで、別の部屋で寝ているんだが、気にしないでやってくれ」
「あぁ。……そうか…」
忍足がいない方がある意味ほっとした。
ふぅ、と小さな溜息を吐いて答える。
「まぁ、とりあえず、……これでも着て座れよ」
跡部が真新しいバスローブと向かいのソファを勧めてきたので、真田は眉間に皺を寄せたままそれを受け取り、太く筋肉のついた腕を通すと、簡単に腰の所を帯で縛ってタオルを取り、ソファにどっかりと腰を下ろした。
「……飲むか?」
自分がシャワーを浴びている間に用意しておいたのだろうか。
ソファの前のテーブルには、香しい匂いをあげて紅茶が煎れなおしてあった。
「随分待遇がいいな…」
勧められるままに紅茶を口に付けながら、跡部の真意を測るように見据えて言うと、跡部が肩を竦めて笑った。
「忍足が迷惑かけたからな。……俺もああいう行動に出るとは思わなかったんでな、途中で戻ってきたんだが部屋に入れなかったぜ」
「なんだ、……入ってきて止めてくれても良かったんだが…」
跡部の返答に、真田の太い眉が更に顰められる。
「それはできねェだろ。俺はそんな無粋な真似しねえぜ」
「…まぁ、それはいいとして……」
飲んでいた紅茶をテーブルに置くと、真田は思案するように顎に手を掛けた。
「……忍足は、あんな状態で、…大丈夫なのか?」
「大丈夫ってなんだよ?」
「いや……」
真田が口籠もった。
「……その、随分と性格が変わっていたような気がしたんだが……」
真田の言葉に、跡部は灰青色の瞳を細めた。
「淫乱になってたって事だろ?」
「…………」
跡部がすかさず言うと、真田が盛大に眉を顰めた。
「どうやらオンナになるとああいう感じになっちまうらしいぜ?」
「………もしかして、お前も忍足と…」
「正解」
「……信じられん……」
「ははっ、そうか? この俺様だぜ? そのぐらいやるだろうが?」
「……それは、そうかも知れんが……」
あからさまに真田が不快な表情をした。
「なんだ、結構純情なんだな」
おかしくなってくす、と笑うと、真田が更に眉間に皺を寄せた。
「……まぁ、俺がどうこう言う問題ではない。……俺はそろそろ帰るとしよう…」
どうやら、跡部の節操ない振る舞いに、気分を害したらしい。
真田は言葉短かにそう言うと、ソファから立ち上がろうとした。
---------------が。
「……うっっっ!」
立ち上がった真田が突如苦しげに顔を歪め、喉に手を当てて苦悶しはじめた。
跡部ははっとした。
(……変化すんのか?)
さすがに、身体が変化するところを見るのは初めてである。
固唾を呑んで見守っていると、真田がそのまま頽れて、がっくりと絨毯に突っ伏した。
「………」
声を掛けることもためらわれ、息を飲んで真田を見つめる。
突っ伏したまま、真田は肩を細かく震わせて激しく息をしていた。
跡部の目からは、真田の乱れた黒髪と、バスローブで覆われた背中が見えるだけなので、いったいどうなっているのか、全く見当がつかない。
数分、そのまま息を詰めて見つめる。
が、真田は動かない。
ばさり、と黒髪を垂らして絨毯に突っ伏しているだけだ。
声を掛けたいのを我慢して、そのまま待つ。
数分待って、じりじりと迫り上がっってくる気持ちを抑えかねて、
「……おい、真田、どうしたよ?」
と、とうとう声を掛けると、漸く真田が顔を上げた。
(…………!)
顔を上げた真田を見て、跡部は一瞬息が止まった。
(……マジかよ…!)
絨毯に俯せになった格好から真田が顔を上げたので、跡部の目には、真田の襟元の、はだけられたバスローブの合わせ目が見えた。
遠目で見ても、零れんばかりに盛り上がっている胸が見て取れる。
むっちりとした胸の谷間が、白いバスローブの間から淡い陰影を作ってほの見えている。
日に焼けた、健康そうな肌はそのままだが、バスローブをびりっと破ってしまうぐらいの大きさの、胸が。
(すげぇ…………)
いったい、何カップなんだろうか。
忍足も大きかったが、その比ではない。
普通ならゆったりとくつろいで着られるはずのバスローブがぱっつりと張り詰め、むちむちした乳房が窮屈そうに盛りこぼれている。
顔はというと----------。
特に際だって変化した所もなく、真田といえば真田なのだが、やはり女性に変化したからだろうか、微妙に雰囲気が変わっていた。
男の時のきりっとした太い眉は、すっと細めになっていた。
眼光鋭い視線や厚い唇はそのままだったが、鼻梁が更にすっきりとし、瞳はやや潤んで、黒目がちの綺麗な二重に長い睫が霧雨のように被さっている。
一言で言って、--------驚愕。
真田がどんな女になるか、いろいろ予想しなかったわけではないが、さすがに目の当たりにすると、跡部は絶句した。
何も言えずにただまじまじと真田を眺める。
と、その跡部の視線を不審に思ったのか、真田が形の良い柳眉を顰めた。
「……急に気分が悪くなったが、大丈夫だ」
と言う声も、低いながらも、男の声ではない。
立ち上がろうとして真田がふらっとしたのを見て、跡部は慌ててソファを蹴って立ち上がった。
「お、おい、…大丈夫かよ?」
側に走り寄って真田の腰を抱き留めると、真田のむっちりとした上半身が、跡部にもたれ掛かってきた。
男であったなら、逞しく堅い筋肉に覆われていたであろう肩や腹は、ちょうど手に心地よい柔らかさに変化している。
柔らかいのに張りのある肌の感触が、バスローブ越しに跡部の手に伝わってくる。
俯せに倒れ込もうとした所を背後から抱き留めたので、跡部の手は、真田の背中から脇腹を抱え込むようにして腹に回っていた。
「……大丈夫だ…」
どうやら真田自身は、まだ自分の身体が変化している事に気づいていないようだ。
低く掠れた中性的な声音が、跡部の身体を震わせる。
(すげえぜ……)
掌に感じる、きゅっと引き締まったウェスト。
バスローブ越しに抱き締めたまま手を上に移動させると、バスローブをこんもりと盛り上げて、巨大な乳房が跡部の掌を押し戻してきた。
「む………?」
さすがに変だと感じたのだろうか。
真田が怪訝そうな声を上げた。
とても掌に収まりきれない大きな乳房。
それを揉みこむように指を動かしながら、バスローブの生地を特に押し上げている、くりっとした乳首を指の先でつついてみる。
「な、なにを……ッッッ!」
そこまで言った真田がはっと息を飲んだ。
「な、なんだ。これは………!」
瞬時身体が硬直し、愕然とした掠れ声を喉の奥から絞り出す。
「なんだってな……胸だぜ?」
ブルーベリーの粒のような大きめの乳首を、バスローブ越しにくりくりと、親指と人差し指で転がしながら、跡部は自分も興奮で少々掠れた声を出した。
「どうだよ、真田……感じるか…?」
「……い、いったい俺は……」
ひゅっと息を飲み、身体をわなわなと震わせて、真田が呆然と呟く。
身体の震えに合わせて、巨大な乳房がバスローブをゆさゆさと震わせる。
乳房を下方からまさぐっていた左手に、ずっしりと乳房の重みがかかってきて、跡部は思わずにやにやとした。
凄い女になったものだ。
まさか、真田がここまで変化するとは----------。
乳房の重みに合わせるかのように、下半身が重く熱くなる。
ペニスが堅く張り詰めて、ズボンの生地を押し上げて痛いまでになる。
「お、い……離せ……」
むっちりとした尻に、無意識にそれを押しつけていたらしい。
真田が戦慄く声で言ってきた。
「…いやだぜ」
「あ……とべっ、…よせっ」
「なんだよ、冷てえな……」
「……はなせっ!」
背後から、すっきりとした項に唇を押し当て、舌で舐めあげた所を、
「…うッッ!」
突然ひじ鉄を食らわせられて腹部に鈍い衝撃を受け、跡部は呻いて力を抜いた。
素早く真田が跡部の腕から抜け出し、後ずさりながら、跡部を睨み付けてきた。
「な、なんなんだ、これはっ! いったいどうして、俺が…っ!」
真田女体受け編。跡部×真田になります。
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