お気に召すまま 
《20》









「ああ、いいぜ?」
「早く終わらせてくれ…」
ンなもったいねえこと、するわけねえだろ?……とは口が裂けても言えないので、その辺は微笑で誤魔化して、跡部はベッドに仰向けに横たわった真田を見ながら、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。
仰向けに寝ても、こんもりと胸が盛り上がって、二つの大きな山を作っている。
眉を寄せ、瞳を閉じてまるで苦行僧のように緊張している様子が、反対にぞくぞくとそそられて、跡部は思わず唾をごくり、と飲み込んだ。
バスローブの裾がはだけて、日に焼けた健康そうな小麦色の太腿が、半分ほど露わになっている。
女になっても筋肉がついているようで、張りのある太腿だ。
その上は、バスローブで覆われて見えないが、…いったい陰部はどうなっているのだろうか。
(…………)
股間がずきん、と疼いた。
息を止めて欲望の奔流をやり過ごし、服を脱いでいく。
全部脱いでソファに脱いだ衣服を放り投げると、跡部はゆっくりと真田に近づいた。
「真田……」
掠れた甘い声で囁き、きっちりと締められたバスローブの紐を解いていく。
真田がぴく、と微かに身動ぎ、眉を顰めたまま瞳を開けた。
吸い込まれそうな、深い焦げ茶の瞳が、嫌そうに自分を見つめてくるのに、つい笑いが零れそうになる。
笑いを押し殺してバスローブの襟元に手を掛けると、跡部は少しずつ襟元を広げていった。
盛り上がった巨大な乳房がだんだんと露わになる。
(……すげぇ……)
日に焼けた艶やかな、むっちりとした盛り上がり。
バスローブを広げても、その胸は平たく潰れる事もなく、二つの山はこんもりと盛り上がったままだった。
乳房にも筋肉でもあるのか、と思わせるほど崩れることのないその乳房に、そっと指を這わせてみる。
指で押すと、そのままの力で指を押し返してくる弾力のある脂肪。
更にバスローブをはだけさせ、乳房をすっかり露わにする。
真田の乳輪は大きかった。
乳首も大きく、くりっとしている。
触れてもいないのに、それはすっかりぷっくりと立ち上がって、微かに揺れている。
思わず吸い寄せられるように、跡部はその乳首に顔を近づけた。
濃いピンク色のサクランボを口にちゅく、と含み、舌先で転がして擦ってみる。
元々大きかった果実は、舌先で刺激した事によって更に勃ちあがり、くりくりと堅い感触で舌に転がる。
「……おい、そんな事はしなくていいから、はやいとこ済ませろ」
真田が心底嫌がっているような声を出した。
目線を上げて、盛り上がった山の上から真田の表情を窺うと、眉間にこれ以上ないほど皺を寄せ、唇をぎゅっと引き結んで堪えている。
「早くと言われてもなぁ、俺は、痛くしたくねえんだよ。お前は、忍足が元に戻るのに協力してくれた恩人だからな……俺も努力するから、お前も協力してくれよ」
と、跡部はしおらしく真田にお願いしてみた。
勿論心の中は、こんなに美味そうな女体を、あっさりいただいてたまるか、という考えである。
美味いものはじっくり味わい、時間を掛けて賞味するのがグルメの醍醐味だ。
「痛い思いだけはさせたくねぇんだ。お前だって忍足に随分親切にしてくれただろうが?」
「む……」
自分が忍足とした時のことを思い出したのか、真田が渋い顔をした。
「それはそうだが……」
「……な? 痛くてつまらねえってのだけは避けたいぜ……。どうせなら、お前に楽しんでもらいてぇって思うんだが、……駄目か?」
真田は結構下手に出ると弱い。
その時も、暫く渋面を作って考え込んでいたが、やがて大きく溜息を吐くと、分かったというように頷いた。
「…では、お前に任せる。俺はとにかく何も分からんから、寝ているだけだぞ?」
「あぁ、了解だぜ。……すまねえな?」
「いや……」
跡部が何度も謝るので、真田も居心地が悪いのだろう、協力するかのように身体の力を抜いてきた。
両手で包むように撫でていた二つの乳房がゆったりと揺れる。
跡部の唾液で濡れた乳首が間接光に照らされて、ぬめぬめと跡部を誘ってくる。
(じゃぁ、いただくか………)
むっちりと盛り上がった二つの乳房に、跡部は微かに笑みを浮かべて顔を埋めた。
「ぅ……ッッ」
大きめの乳首を舌でくり、と転がすたびに、真田が身動ぎする。
乳房がゆさゆさと揺れ、弾力のあるその振動が掌に伝わってくる。
跡部はすっかり勃起した乳首と乳輪を舌で舐め回しながら、ゆっくりとバスローブの帯を解いていった。
初めての女とセックスするときはいつもそれなりに興奮するものだが、今の興奮は、それらの比ではない。
忍足とした時も興奮したが、その時とはまた違った種類の興奮だ。
即ち、普段は絶対にこういう事などできそうにない、というよりはそんな事など想像もできないような相手を自分の身体の下に組み敷いている…。
しかも、その相手は途轍もないダイナマイトバディなのだ。
これで興奮するなという方が無理だ。
経験豊富な跡部でも、すでに股間が爆発寸前である。
しかし、すぐにでも身体を繋げたい欲望を堪えるのも、また一興。
バスローブの帯を解き左右にはだけさせると、真田の、日に焼けて引き締まった小麦色の肌が、余すところ無く現れた。
指で押すと、そのままの力で戻ってくるような、張りのある肌。
小山のような盛り上がった乳房の下には、女になっても筋肉が綺麗について引き締まった腹が、微かに呼吸に合わせて上下している。
形の良い縦長の臍の下は、ふっくらとした恥丘に続き、その下には、ふさふさと生えた真っ黒な陰毛が茂っていた。
真田の髪の毛と同じ直毛の、艶やかな茂み。
ごくり、と思わず唾を飲み込み、跡部は興奮で霞む目を瞬いた。
下半身に血流がどっと流れ込む。
(くそ、落ち着け……)
と自分を叱咤しながら、大きく深呼吸をする。
真田の裸体を見下ろしながら、自分もゆっくりと服を脱ぐ。
真田は、瞳を固く閉じ、眉間に軽く皺を寄せたまま、まるで診察でも受けるかのようにじっと身体を硬くしてベッドに横たわっていた。
形の良い眉が微かに動き、跡部が離れたのが気になったのか、瞳がうっすらと開いた。
ズボンを下着ごと脱いで、再びベッドに上がってきた跡部と、目線があう。
「…………」
跡部が全裸になっているのにさすがにぎょっとしたのだろうか、真田が一瞬目を見開いた。
それからすぐに堅く目を閉じ、跡部の視線が恥ずかしいのか、顔を背ける。
「真田……」
掠れた低い声で囁きながら、跡部は真田の身体を跨いで膝立ちになると、顔を屈めて、真田の背けた頬にそっと手を触れた。
「こっち、向けよ…」
ぐい、と顔を自分の方に向かせて、厚めの唇に、すっぽりと唇を合わせる。
「……む…」
真田がくぐもった呻きを漏らした。
ゆさゆさと乳房が揺れる。
大きめの乳首が跡部の裸の胸に触れて、微妙な刺激を胸に与えてくる。
真田の唇はふっくらとしており、執拗に舌で歯列をつつくと、観念したのか口を開いてきた。
すかさず舌を滑り込ませ、深く唇を合わせて、舌を絡ませる。
「ぅ………」
こういう激しい口付けはきっと初めてなのだろう。
真田の身体がぴく、と震える。
体重をかけると、跡部の胸に弾力のあるむちむちとした肉塊が当たる。
ぞくぞくと背筋を快感が駆け抜け、跡部は真田の下腹に、堅く張り詰めた怒張を擦りつけた。
「…………!」
真田がびくっと大きく身体を動かした。
逃れようとする所を上から押さえ付け、更に深く舌を伸ばして、唾液を送り込みながらディープキスを交わす。
くちゅ、と濡れた微かな音が部屋に響いて、それが真田の耳にも入ったのだろう。
真田の腕が跡部を僅かに押し退けようとしてきた。
「…抵抗は無しだぜ?」
唇を少し離して触れるか触れないかの所で囁くと、真田が形の良い眉を顰める。
「痛かったらすぐに言ってもらいてェが、それ以外は俺に任せろ」
「………分かった…」
とにかく、ここは跡部の言うとおりにするしかない、とは重々承知しているのだろう。
真田が憮然とした声音で答え、身体の力を抜いた。
ゆさ、と胸がまた揺れる。
真田の大きめの乳首と、跡部の堅く小さな乳首が擦れ合って、微妙に擽られ、更に背筋を快感が走り抜ける。
すぐにでも、挿入してしまいたかった。
もうペニスは勃起しきって、堪えるのが拷問なぐらいだ。
跡部は顔を軽く振り、切羽詰まった欲望を、深呼吸を何度もすることでやり過ごした。
…………まだ、駄目だ。
もっと、真田を気持ち良くさせて、真田自らが入れてくれ、と頼むぐらいまで興奮させないと……。
真田が相手だという事を考えると、随分と無理難題な感じもしたが、それはそれでやる気が出るというものである。
慌てず、着実に行動しないと。
跡部は、真田のふっくらとした唇を啄むようになんども優しく口付けし、頬や目尻にも軽く唇を触れさせた。
真田が擽ったそうに身動ぐ。
「おい……」
「……なんだよ?」
「……そういう事はいいから、……早くやることをやって…」
「俺にこうされると、気持ち悪いか?」
「…いや、そういう事はないが……」
跡部が少々気落ちしたような声を出すと、真田が慌てて否定した。
「じゃぁ、気持ちいいか?」
「………」
「気持ちよくねぇのかよ…」
「い、いや、そういうことはないぞ?……その、なかなか、いい気分かもしれん…」
(素直じゃねえかよ…)
と、心の中でこっそり笑いながら、跡部はほっとしたような表情を見せてみた。
「良かったぜ。…お前が気持ちよくなってくれるのが一番だからよ?」
「………」
困ったように真田が視線を逸らす。
目許が少しだけ赤くなっているのを見て、跡部は灰青色の瞳を細めた。
















真田編その3