お気に召すまま 
《23》









「くッッッッ!!」
さすがに真田が喉を詰まらせて声を上げ、息を飲んで硬直する。
「ほら、堅くなるなよ、息を吐けよ…」
ぬめぬめとした柔らかく熱い粘膜を押し分けてペニスを根元まで突き刺し、ふぅ、と満足げに息を吐きながら、跡部は真田に囁いた。
「真田……入ったぜ…」
低い甘い声音を紡ぎながら真田の堅く瞑った瞼にそっと口付けを落とすと、真田が固く閉じた瞳をうっすらと開け、ぴく、と震えた。
「痛いか……?」
瞼から目尻に舌を這わせ、吐息混じりの小声を耳朶に吹きかける。
「…む……べつにッ、……痛くなど、ない……ッ」
やせ我慢なのだろう、掠れた震え声で答える。
が、真田のそう言う言葉を聞くと、ぞくぞくと歓喜が込み上げてきた。
真田の中は、きゅ、と跡部を締め付けてはやわやわと蠕動し、いわゆる『蚯蚓千匹』とでも言うのだろうか、ペニスを奧へ奧へと誘い込むように肉壁が千変万化、蠢いてくる。
(これで処女かよ、恐れ入ったぜ…)
しかも当の真田は、自分の身体がそんな風に動いているなど、夢にも想像していないようだ。
一度抜いておいたからなんとか堪えることができるようなものの、もし抜いていなかったら入れた瞬間に射精してしまったかもしれない。
再度高まってきた射精感をぐっと堪えて、跡部は頭の隅でそんな事を思った。
「痛くねえなら……動くぜ?」
二度目でも、そんなに保ちそうにない。
真田の太腿を抱えあげ、肩に乗せて体重を掛けて足を開かせる。
一気に腰を引き、ぐちゅ、と水音を響かせてペニスを抜く。
すぐに腰をぐっと突き出して、ずぶりと蜜壺を貫く。
「うッッ!」
真田が目を見開き、顎を仰け反らせる。
抱え上げた太腿が震え、乳房がぶるん、と揺れる。
眩暈がした。
--------もう、もたない。
さっき一度抜いたというのに、こんなに自分がもたないとは。
今まで跡部は、己のテクニックと持続力には自信を持っていた。
中学生とは思えないほどの経験を重ねてきたという事もあるし、自分でも努力を怠らない。
たとえ処女だろうがなんだろうが、向こうから足を開いて誘うように焦らすことなど造作もないことだったのに。
それが、真田の前では、まるで自分が童貞の少年のようだ。
(……くそ!)
真田が痛がっているだろう事は十分分かるのだが、真田を労るゆとりがなかった。
「…く、うっっ………んぐッッ…」
痛いのだろう。
真田は堅く瞼を閉じ、眉を寄せて眉間に皺を作り、唇を震わせて呻いていた。
黒く長い睫が細かく震え、顔を激しく振るのにあわせて、黒髪がさらさらと流れるようにベッドに舞う。
シーツを千切れるほど掴み、跡部の激しい動きに耐え、むっちりと小山を作っている巨大な乳房を左右にゆさぶらせながら、無意識だろうが、跡部の動きに合わせて腰を動かしてくる。
内部の濡れた軟体動物のような内壁が、跡部のペニスを締め付けてはやわやわと蠢き、奧へ奧へと引きずり込むように吸い付いてくる。
「……イくぜっ!」
短く呻いて、跡部は真田の弾力のあるむっちりした胸に顔を埋めた。
全身が震え、閉じた目の裏で閃光が爆発する。
一瞬ふらっと意識が消失するぐらいの快感が全身を駆け抜け、跡部は身体を痙攣させながら、真田の奥深く狭くまとわりつく熱い粘膜に向かって白濁液を叩きつけていた。















「ふぅ………」
ふら、と眩暈がした。
うっすらと目を開け、頬を乳房に押しつけると、柔らかな弾力のある塊が、頬をむに、と押し上げてくる。
全身から汗が噴き出し、跡部は思わず顔を振って深く息を吸った。
酸素不足になっていた脳に忽ち酸素が行き渡るのを感じる。
息をゆっくりと吐き顔を上げると、真田は蒼白な表情で堅く目を閉じたまま息を詰めていた。
「おい、息、しろよ……」
「…あ、あぁ……」
言われて真田が、震える身体から少しずつ力を抜いていく。
黒く濡れた瞳が、茫洋と霞んで跡部を見上げてきた。
痛いのだろう、色を失った唇が微かに震えている。
その些か厚ぼったい唇に、自分のそれを触れ合わせて、舌で上唇の輪郭をなぞってやると、真田の唇が開き、熱い舌が、跡部の舌を絡め取るように動いた。
そのまま真田の口腔内に誘われるようにして舌を差し入れ、軟体動物の交尾のごとく、舌同士を淫猥に絡め合わせる。
唾液が溢れ、真田の唇の端から溢れ出る。
「…いやらしいな、お前…」
深い口付けの後、思わずぼそり、とそう呟くと、真田が僅かに視線を逸らした。
反論する気はないらしい。
「真田……」
馬鹿正直な所が可愛く思えて、跡部は柔らかな口調で吐息混じりに名前を囁くと、再び唇をすっぽりと重ね合わせた。
真田の巨大な二つの乳房に自分の胸をぴったりと押し当て密着させると、汗で濡れた熱い肌を通して、規則正しい速い鼓動が伝わってくる。
そのリズムが心地良く、このままずっと肌を合わせて眠ってしまいたくなる。
が、隣の部屋には忍足が待っている。
跡部は名残惜しい気持ちを抑えて、真田から身体を起こした。
ずる、と萎えたペニスを引き出す。
「………ッッ」
刺激が来たのか、真田が眉を顰めて喉の奥で呻いた。
ペニスを引き出し、真田のむっちりとした太腿をそっとベッドに降ろすと、ペニスが抜けた後の蜜壺から、ぷく、と泡立ったようにピンク色の粘液が滲み出てきた。
ピンク色に濁ったそれが、真田の充血した花弁の中心に溢れ、つつっと垂れ落ちる。
「やっぱ血が出たな……」
そこを凝視して言うと、真田が頬をうっすらと赤らめた。
「別に、そういう事は言わんでいい…」
掠れた声で答えると、仰向けに寝ていた上体を起こしてくる。
「ぅ………」
局所が痛んだのであろう、瞳を閉じて呻く様子がまたたまらなく扇情的だ。
乳房がゆさゆさっと揺れ、重そうなそれが、身体を起こしたことによって、むっちりと下を向く。
「シャワー、浴びるか?」
真田の手を取って囁くと、真田が瞳を開いて頷いた。
「アソコ、締めてけよ?垂れるぜ…」
些か戯けて言うと、いやそうに眉を寄せる様子が更にたまらない。
(元に戻っちまうのが勿体ないぜ…)
よろよろと真田がシャワー室に入っていくのを眺めながら、跡部はベッドに胡座を掻いて独りごちた。















真田がシャワーに入っている間に、跡部はまたベッドのシーツをかえて新しくしておいた。
真田が出て、入れ替わりに跡部がシャワーに入り、熱いシャワーで身体を流して部屋に戻ると、真田はバスローブを羽織り、ぼんやりとした様子でベッドの端に座っていた。
「……どうしたよ?」
疲れたのか、と、部屋の片隅の冷蔵庫から冷えたペットボトルを取り出し、レモン味のそれを一つ真田に手渡す。
受け取って、ごくり、と喉を鳴らして飲み、真田はふぅ、と深く息を吐いた。
「いや、その………とりあえず、お前には感謝せんとな…」
と、歯切れの悪い調子で困ったように言ってくるのには可笑しくなって、跡部は思わずくす、と笑ってしまった。
「ンな他人行儀、よせよ……もう、俺とお前は他人じゃないんだぜ?」
と言うと、盛大に眉を顰める様子が可愛らしい。
「なぁ、痛いかよ?」
「いや、………そうだな、鈍痛はするが……それほどでもない。筋肉痛のようなものだろう」
などと真顔で言うのが更に可笑しい。
「ホントにお前ってやつは…」
肩を竦めてペットボトルを口に付けるとごくごくと飲み干す。
体力を使った身体に、冷たいそれがほの甘く美味だった。
跡部が美味そうに飲むのを眺め、真田もペットボトルに口を付けるとぐっと飲み干す。
唇をぐい、と拭いて、跡部は真田に笑いかけた。
「運動したあとは美味いな?」
「うむ、……まぁ、そうだな……」
羞恥心が戻ってきたのか、ぼそぼそ呟いて顔を逸らす仕草がそそられた。
(すぐに男に戻っちまわなければ、もっとヤりてえものだが……)
肉感的な身体と敏感で反応の良いのがたまらない。
(女じゃなくて良かったかもしれねえな、こいつ。……男がほっとかねえぜ…)
などといろいろと勝手な憶測をしている跡部を、真田がじっと見つめてきた。
「……なんだよ?」
「いや、その、……あと一人関係せんと、俺は元に戻れないんだろう?」
先ほど吐いた真っ赤な嘘を馬鹿正直に信じている。
思わず笑いが込み上げてきて、跡部は慌てて表情を引き締めた。
「あぁ、そうだな」
申し訳ない、という沈痛な面持ちをして頷くと、真田が溜息を吐いて俯いた。
「そうか……致し方ない。……誰かに頼むしかないようだな…」
「……誰にするんだよ?」
真田が女になった身体を晒して抱いてくれ、と頼める人物がいるのか、と内心興味津々で尋ねる。
「……頼めるとしたら、蓮二か幸村しかいないが…」
「……へぇ、立海内かよ……」
この真田が、いったいどんな顔をして、そんな恥ずかしい頼みをするのか。
まぁ、相手は、こんな巨乳の感度の良い女を抱けて幸せだろうが。
「とりあえず、一刻も早くこの状態から元に戻りたいのでな、即刻頼むことにする」
そうしてもらわないと、数時間後には真田の身体は自然に元に戻ってしまうだろうから、こっちも助かる、などと心の底でこっそり思って跡部は肩を竦めた。
「ところで、忍足はどうした…?」
「あ、あぁ、…疲れて眠ってるぜ。一日ぐらいは寝かせておかねえとな?」
「そうか……。では、忍足にも宜しくと言っておいてくれ。本当はきちんと会って挨拶をしたいのだが、すぐに俺の方をなんとかせんと…」
と、真田が焦っているのを見て、跡部は安心しろ、というように真田の肩を叩いた。
「そう焦るなよ。まず、頼める相手に電話してみろよ。どこかで会う約束したら、そこまで車で送ってってやるよ。その方がお前も他人に姿を見られないからいいだろ?」
「む……そんな事までお願いしてしまってもいいのか?…すまん……」
などと律儀に頭を下げてくるところが、真田らしく馬鹿正直だ。
元はといえば、こっちのせいで女になってしまったというのに。
跡部はそのぐらいなんでもない、というように手を振った。
















真田編その6