部長、大変です!
《22》













(こいつ、俺の裸とか見ても、全く興奮してねえようだな…)
男は趣味ではないのかも知れないが----というか、それが普通なのだろうが----跡部は自分の存在が無視されているような、そんな不快な気分になった。
少しは顔を赤らめるとか、視線を逸らして身体を拭くとか、そういう素振りがあってもいいだろうに。
今の柳はまるで介護のプロとでも言うかのように、冷静に穏やかに跡部の身体を拭いている。
それに瞬時むっと来て、跡部は不意に手を伸ばすと、柳の股間を握りしめた。
「……っ!」
さすがに驚いたのか、柳が開いているのかいないのか分からないような細い瞳を珍しく開いて、跡部を見下ろしてきた。
「ふん……一応ついてるんじゃねえか…」
勃起はしていないものの、布地を通して肉棒の感触が手に伝わってきて、跡部は口端を歪めた。
「…なんだ?」
「いや、お前があんまり無反応だからよ。……もしかしてついてねえんじゃねえかって思ったってわけよ」
「……ついてないわけはなかろう…」
と、股間を掴まれていながらあくまで冷静な口調である。
跡部はむかっとした。
「ついてても、役にたたねえんじゃねえのかよ? あーん? インポってな…」
「………」
「どうなんだよ、柳」
柳を見据えたまま、制服のズボンのジッパーをジィッと音を立てて降ろすと、その下に履いていた灰色の地味なトランクスの隙間から直接手を突っ込む。
柳がぴく、と身体を強張らせた。
「……跡部…」
困惑したような口調で静かに言ってくるのがまたしゃくに障って、跡部は握った温かな肉塊を扱き始めた。
「………」
柳が薄い唇を軽く噛んで、瞬きをする。
どうしたらいいのか分からない、というような複雑な表情で、跡部を見下ろしてくる。
跡部は跡部で、扱いてもなかなか堅くならない肉塊に焦れてきた。
「……おい、役立たずかよ、やっぱり。…インポかよ、お前」
「………言葉が下品だぞ、跡部。……俺はお前のように経験していないのでな。分からない」
「あァ? マスとかかかねえのかよ?」
「跡部…」
柳が微かに頬を染めた。
「そういう下品な言葉はお前の口には似合わないと思うが……それに、俺はこういう事にはあまり興味がないので……とにかく困る。手を離してくれないか?」
「興味がねえだと…?」
まるで自分に興味がない、とでも言われたようになぜか頭に来た。
落ち着いて考えれば、柳が自分に興味が無くても当然だし、だいたい同性である男にこういうことをされて興奮する方がおかしいかもしれないのだ。
物理的に刺激を与えられれば勃起してしまうかもしれないが、普通なら、困惑や拒絶のほうが当然なはずだ。
だが、その時の跡部は無反応な柳がしゃくに障ってしかたがなかった。
自分がまだじんじんと、セックスの余韻を身体中に残しているからかも知れない。
柳の熱い肉塊を掴んでいる手からじぃん、と疼くような刺激が駆け上り、背筋を降りて股間に集まっていく。
むくり、と自分のペニスが頭を擡げ、びくびくと脈打ってくる。
---------つまり、また興奮してしまったわけだ。
おかげで目の前の、しれっとして涼やかな、無反応な柳が憎らしくてしかたがない。
なんとかしてこいつを興奮させて、襲ってやりたい。
今まで、跡部の裸体を目の前にして興奮しない男はいなかった。
あの堅い手塚や真田でさえ、誘ったら簡単に落ちたのだ。
なのにここで柳だけ見逃すわけにはいかない。
己の沽券に関わる。
いつのまにか問題点がすり替わっているような気もするが、……とにかく目の前の柳だ。
(こいつをなんとかして……)
跡部は不意に起きあがると、畳の上に柳を押し倒した。














「…跡部?」
慌てたような口ぶりだが、柳は抵抗はしなかった。
ただ困惑したまま、跡部に圧し掛かられて、細く秀麗な眉を寄せて跡部を見上げてきた。
「黙ってろ…」
その柳に畳みかけるように言葉を重ねると、跡部は柳のズボンを脱がせにかかった。
「……ちょっと待て」
さすがに跡部が本気なのが分かったのだろう。
柳が、ズボンを脱がせようとする跡部の手を押さえてきた。
「うるせえな……あァ? お前んとこの部員が俺にしたこと、他人にばらしてもいいのかよ? ンな事ばれたら、忽ち立海は出場停止だなァ……? ばらされたくなかったら大人しくしてろ」
「………」
柳の細く形の良い眉がきゅっと顰められる。
嫌そうな表情に、跡部は鼻で笑った。
「物分かりがいいようだぜ、柳。……んじゃ、大人しくしててもらうかよ」
抵抗がやんだのを見て取り、跡部は行動を再開した。
柳のズボンのベルトを外し、下着毎勢いよく脱がせる。
靴下までそっくり脱がせて、足を広げさせ、両脚の間に割って入る。
柳の性器は全く勃起していなかった。
まぁ、こんなふうに無理矢理襲われて勃起していたら、それはそれで変態だろうが。
形の良い、身体に似合った大きさの上品そうなソレを、跡部は無造作に摘むと、下の袋ともどもわしわしと揉みしだきながら、太腿を掴んでぐっと上に押し上げた。
「…あ、…とべっ」
「…うるせえ!」
柳の抗議の声など聞く耳持たぬ、とばかりに声高にそう言うと、跡部は、柳の陰嚢の下に顔を近づけた。
両脚を上げたせいで、白い二つの尻肉の間の、奥まった襞が露わになっていた。
綺麗に揃った窄まった襞が、呼吸に合わせてひくっと動く。
(結構、こういうところもそそるぜ…)
含み笑いしながら、跡部は自分の右手の指を舐めると、柳の其処におもむろに人差し指を突き刺した。
「ぅ……ッ」
柳が低く呻いて、眉を寄せて瞳を固く閉じる。
「……なかなかいい感じじゃねえ…?」
指先が、熱く柔らかな内壁のうねりを感じ取って、跡部はにやっとした。
そのまま指を埋め込んで、柔らかい内壁をぐりぐりと抉るように刺激していく。
「…うッッ!」
この辺か、と予想した辺りを指先で擦ると、柳が身体を強張らせた。
(ここか…)
感じる点を見つけたらしい。
その部分のみを指で攻めると、柳がさらりとした髪を揺らして首を振り、手を伸ばして跡部の髪を掴んできた。
目の前の柳のペニスがむくり、と胎動を始める。
指を動かす程に、むくむくと肉棒が形を取り、海綿体が血を集めて勃起していく様が見て取れた。
(結構、でかいな…)
見る見るうちに柳のペニスが勃起し、先端が綺麗に剥けて薄桃色の頭がゆらゆらと天に向かって聳えたつ。
ごくり、と思わず唾を飲み込んで、跡部はそれを凝視した。
目の前が霞むような気がした。
ぞくっと全身が戦慄いて、下半身が疼く。
「…ちゃんと使えるようになったじゃねえかよ…」
掠れた声で言うと、跡部は指を抜き取り、素早く柳の腰に跨った。
柳が薄目を開け、呆然として跡部を見上げてくる。
その顔に、形良い唇を綻ばせて笑いかけると、跡部は勃起した柳の砲身を、自分の肛門に押し当てた。
息を詰め、一気に腰を沈めていく。
「う……んんッッ!」
体内に堅く熱い物体が押し入ってくるその甘い衝撃に、思わず背筋を反り返らせて呻く。
上から自分で体重をかけたからだろう。
柳の長いペニスが体内の奥深くまで挿入され、さんざん嬲られて敏感になっていた内壁の感じる部分を容赦なく抉ってきた。
「はッん……あッ、……やなぎッ…す、げえぜ……ッッッ!」
首を激しく振り、上擦った声でそう言うと、跡部は一度最奥まで収めた柳の性器を、一気に腰を浮かせて引き抜いた。
と思うと瞬時に、更に体重を掛けてずぶりと体内に収める。
「あァッ、あ…ッくッッッ………はッッ…んッ、くッッ!」
腹の奧深くに熱く溶けた快感が充満し、それが血管を伝って全身に伝播していく。
脳がぐずぐずと蕩け、跡部はあられもなく声を上げて、激しく腰を上下に振り動かした。
「…くッ、あ、とべっ、よ、せ…ッ」
柳が苦しげに呻く。
「はッ、……こ、ここでッ、やめられるッ、…かよッッ、ばーかッッッ!」
こんなに気持ちがいいのに、やめられるものか。
はぁはぁと激しく息をしながら、跡部は柳の腹に置いたてに力を込め、腰を激しく揺り動かした。
快感が濁流のように、己のペニス目掛けてうねり進んでいく。
「あ、あァッ……い、くぜッッッ! テメェもっ、イ、けよッッ!」
一際深く、腸壁に柳のものを飲み込みながら、跡部は全身を震わせ背中を反り返らせると、白濁を勢いよく柳の胸や顎にまで迸らせた。














「………はァ…、ッ……」
激しい射精に一瞬目の前が暗くなり、ぐったりと柳の胸に突っ伏して脱力する。
己が射精するのとほぼ同時に体内にも柳の精液が溢れ出て、それが緩んだ肛門を熱く濡らしている。
柳の清涼な体臭と汗、それに己の放出した青臭い精液が互いの密着した肌を滑り、その粘液の粘ついた感触と匂いが、情事の余韻に心地良かった。
「……跡部…」
柳が下から小声で囁いてきた。
「…ん? なんだよ……」
猫がじゃれるように、柳の胸に顔を擦りつけて余韻を楽しんでいると、柳がその跡部の頭を軽く撫でてきた。
「全くお前は……」
呆れたような声音だが、その中に笑いが混じっている。
「…俺がなんだよ…?」
「…いや、……その……さすが、氷帝の部長だな…」
「……は? なんだそりゃ…」
と悪態を吐いてはみるものの、身体もすっかり満足している上に、柳をその気にさせてセックスさせたという満足度もあってか、跡部の口調は柔らかかった。
「…今までの、お前に対する認識を改めねばならないと思ったのだ。他意はないのだが…」
「……まぁいいぜ……っと、もうこんな時間かよ…」
情事の後の余韻に浸ってまったりとした時間を過ごしたかったが、ふと部屋にかかっている時計を見ると既に夜の6時を過ぎていた。
立海大附属中には午前中から来ていたわけだから、結局丸一日いた事になる。
これから急いで帰っても、自宅に着くのは夜の7時過ぎ。
今日は夕食は外食の予定で、都内でも有数の高級レストランに午後8時に予約を入れてあるはずだった。
(まずいぜ…)
今すぐに帰らないと、出かける時間に間に合わない。
慌てて跡部は身体を起こした。
「ん……ッ」
体内に治まっていた柳のモノを無意識に締め付けてしまい、中でペニスが蠢いて、その刺激でまた下半身が甘く疼いて思わず声が漏れる。
「…跡部……?」
柳も上体を起こした。
「すぐに帰らねえとまずいんだ。後始末頼むぜ」
時計を睨みながらタオルでごしごしと身体を拭き、制服を大慌てで身に着けると、
「んじゃ、またな?」
柳の返事も聞かずに跡部は立海の部室棟を飛び出した。
















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