お気に召すまま 
《29》











心臓がどくん、と跳ね、なんとも表現しようのない怒濤のような衝動が、背骨を通って脳天まで駆け抜ける。
触れるのも怖いような、とろけそうに柔らかく濡れた花びらに、震える手を伸ばして軽く触れる。
火傷したか、と思った。
溶けたバターのようにとろりとした感触と、熱く指を包み込んでくる花びらの繊細な震え。
「れ、んじ…」
真田が苦しげな声を出した。
「そんな所を見ても、つまらんぞ……」
「いや、そんな事はないぞ、弦一郎。……非常に興味深い……」
できるだけ落ち着いた声を出したつもりだったが、上擦ってしまった。
興奮が真田に伝わったのだろうか、自分の声を聞いた真田がびく、と怯えたような瞳をした。
「……れんじ…」
その震えるような声がまた、股間をズキンと直撃してきた。
---------真田がこんな声を出すとは。
常に自信に満ちた、低く張りのある声と、他を睥睨する鋭い視線。
……それが皇帝、真田弦一郎だったはずだ。
それなのに今、自分の前であられもなく恥ずかしい部分を晒している彼は、全くの別人のようだった。
いや、別人ではなく、こういう面も紛れもなく真田の一面なのだ。
そう思うとぞくぞくした。
手を伸ばして、柳は人差し指をつぷ、と蜜の溢れ出る泉の入り口に挿入した。
「う……」
びくん、と真田が身体を大仰に震わせる。
どこまでも柔らかく、指がとろけそうな熱い蜜壺に、指をゆっくりと挿入していくと、内部が軟体動物のようにうねり、指をやんわりと締め付けてきた。
「駄目、だ……れんじっ」
真田の押し殺したような掠れた声に、下半身が痛いほど疼いた。
忙しない息づかいと、顔を背けて唇を噛んでいるらしい真田の仕草にも、もうどうにもならないほどの興奮が押し寄せてくる。
柳は押し黙ったまま指を抜くと、一気に着衣を脱ぎ始めた。
真田が見ている前で全裸になると、羞恥もなく、腹に着くほどそそりたったペニスを隠しもせずに真田の前に立つ。
「れんじ……」
親友のそんな姿を見るのは勿論初めてな真田は、恐れおののくように名前を呼んだ。
「……では、いくぞ、弦一郎……」
もはや一刻も我慢できなかった。
他人とセックスをしたことのない柳には、自分がどれぐらい保つのかも分からない。
が、とにかく、すぐに真田の中に入りたかった。
「…あ、あぁ……」
柳の言葉にごくり、と唾を飲み込んで、真田が更に脚を開く。
「…恥ずかしければ、目を閉じていろ、弦一郎…」
羞恥に目許を染めて、落ち着き無く視線を逸らしている真田にそう言うと、柳は真田の足の間に身体を入り込ませ、上からのしかかるようにしてペニスを蜜壺に押し当てた。
熱く濡れる感触に、目の前が霞む。
巨大な乳房が盛り上がり、舌を伸ばせば大きなピンク色の乳首に届きそうである。
その乳首も霞んで、柳は顔を振った。
真田が息を詰め、ぎゅっと目を閉じる。
形の良い眉が顰められたその表情にも、たとえようもないほどそそられる。
息を吸うと、柳は一気に肉棒を突き入れた。
「…くッッッ!」
眉が更に顰められ、眉間に深い皺ができるのを見下ろしながら、ぐっと腰を突き進め、深々と熱く濡れた膣の中に砲身を納める。
「……弦一郎…ッ」
歓喜が突然津波のように押し寄せてきた。
真田が、愛おしい。
その気持ちが柳の全身を凌駕する。
「弦一郎……弦一郎ッッ」
真田の体格の良い体を強く抱き締めると、盛り上がった乳房に顔を埋めて鼻を擦りつけるようにする。
きゅ、と膣壁が締まって柳を締め付けてきて、背筋が総毛立つ。
あっという間に限界が近くなる。
「…動くぞっ」
顔を上げると柳は真田を抱き締めたまま、激しく抜き差しを始めた。














「あ…くっ、は、ぁ……れん、じッッ……は、ッッ……!」
ベッドがぎしぎしと撓み、真田の切れ切れの呻きが部屋に響く。
ぐちゅぐちゅという湿った淫靡な水音がそれに混じり、柳はもはや何も考えられなかった。
全身が快感に支配され、ただ目の前の愛しい存在をもっと感じたい、もっと深く繋がりたいという気持ちに突き動かされる。
血液が逆流し、下半身が一気に爆発した。
「………ッッッ!」
唇を血が滲むほど噛み締め、真田の熱い体内に欲望を一気に迸らせる。
大きく息を吐き、射精の快感に身体を真田の上に投げ出して、むっちりとした乳房に顔を埋める。
乳房の弾力と、汗をかいたのかしっとりとした肉感に堪らず、鼻を埋めて匂いを嗅ぐように鼻から息を吸う。
「れん、じ……」
吐息混じりの甘い声に、柳は顔を上げると、真田の半開きの唇に自分の唇を深く合わせた。
口付けなどしたこともなかったし、まさか真田とする事になるなど思ってもいなかったが、その時はごく自然にしたくなったのだ。
「………」
真田もいやがらず柳の舌を迎え入れ、二人は舌を絡めあって長く深い口付けを交わした。
唾液が互いの口端から溢れ、仰向けになっている真田の顎を伝い落ちていく。
「弦一郎…」
ちゅ、と軽く音を上げて唇を離し、掠れた声で名前を呼ぶと、真田が濡れた黒い瞳を上げて柳を見た。
その瞳の色にたまらなくなって、また唇を合わせる。
胸がいっぱいになって、なぜか幸福感が溢れてきた。
何度も何度も唇を合わせ、真田の唇を貪る。
唇をこれでもか、というほど吸いあげ、それでも足りなくて首筋に吸い付いて強く吸って薄紫の痕を残して、ようやく柳は満足して顔を上げた。
「む……」
真田がくすぐったげに首を縮めて唸る。
「そ、その……なんというか、その……凄かったのだが………。もしや蓮二は、誰かと経験でもあるのか……いや、もしかして、付き合っている女子など、いるのだろうか……」
微妙に視線を逸らして、真田がぼそぼそと呟いてきた。
「も、もしいたとしたら、その……申し訳ないことをしたか、と……」
「弦一郎……」
真田の言葉にたまらなくなって、柳は真田の唇を再度塞いだ。
「んっ……」
激しく噛みつくように唇を押しつけて、真田の身体を強く抱きすくめる。
「そんなものはいない……分かっているだろう、弦一郎。……いつも、俺とお前は一緒にいるだろうが」
「む、そ、そうだな……」
真田があからさまにほっとしたような声を出したので、柳はついつい細い瞳を更に細めて真田を見下ろした。
「バカな事を言うな、弦一郎……まぁ、凄いというのは、誉めてくれたと解してもいいのだろうがな…」
「れ、れんじ……」
真田が目元を赤らめて視線を逸らす。
そんな仕草が、いつもの真田とは全く違って新鮮で可愛いらしく、柳は達したばかりだというのに、真田の体内に入ったままだったペニスが再び硬度を取り戻すのを感じた。
















真田編その12