お気に召すまま 
《30》











先ほどは初めてというのもあり、入れた途端に射精してしまったようなものだった。
蕩けるほど熱く柔らかな粘膜が自分の性器に絡み纏わりついてくる甘美な感触に、我を忘れてしまった。
しかし、あれでは、真田は気持ち良くなかったのではないだろうか。
以前その手の雑誌を暇つぶしに読んだ時、女性はセックスの時演技をしている割合も多いというデータが載っていたのを、柳は思い出した。
真田が演技をするとは思えないが、無理して合わせてくれていたのかもしれない。
もっと、弦一郎に気持ち良くなってもらいたい。
柳は射精したものの、まだ堅さを失っていない性器をそっと抜き取った。
「う……」
抜き取られる感触に、真田が微かに呻く。
「……終わりか?」
という問い掛けに些か寂しさが滲んで聞こえたのは、錯覚ではあるまい。
柳は瞳を細めて笑いかけた。
「いや、まだだ。お前をもっと味わいたい……。弦一郎、力を抜いていろ…」
「あ、あぁ…」
柳の言葉に、あからさまには見せないものほっとしたかのように頷いて、真田が息を吐きながら身体の力を抜く。
真田の下半身に身体を移動させ、真田のむっちりとした太腿に身体を割り入れると、柳は先ほどまで自分が入っていた部分を凝視した。
「蓮二……そう、見るな…」
快感には羞恥というスパイスが加わった方がより度合いが高くなるものだ。
柳はくすっと笑った。
「なんだ、見られると恥ずかしいのか?…ここは見られるのを喜んでいるようだがな…」
「なっ…」
真田の抗議を無視して、くぷ、と白濁をを溢れさせている蜜壺に指を入れてみる。
「ぅ…」
真田が掠れた声で呻いた。
「…痛い、か?」
「…痛くはないが……」
赤く充血した花弁の内側を指の腹で優しく撫でながら、指を大きめの真珠に到達させる。
直接ではなく間接的にゆっくりと円を描くように愛撫すると、真田の腰がびくっと震えた。
寄せては返す波のように、少し強く刺激したかと思うとすっと指を引いて、今度は触れるか触れないか程度に、羽で撫でるように軽く触れていく。
真田がもじもじと腰を動かし、それとともに、花弁がひくひくと震えた。
「れ、んじっ…その……」
「なんだ、弦一郎。なんでも言ってみろ」
「い、いや…」
「…痛いのか?」
「そう、ではなくてっ……な、んというか…」
秀麗な眉を寄せて、真田がきゅっと瞳を閉じる。
長い睫が震え、半開きになった唇を無意識だろうか、舌で舐めるのが清楚な中にもえもいわれぬ淫靡さを醸し出していた。
ぞくり、と背筋を快感が走り抜け、忽ちまた性器が堅くなっていく。
逸る心を抑え、柳は殊更に繊細に、指を細かく動かして花芽を愛撫した。
「はっ…んっ……く…ッ」
真田がくぐもった喘ぎを漏らす。
目を固く閉じたまま顔を振り、ベッドの上で背けるようにして枕に顔を埋める。
巨大な乳房がゆさっと揺れ、滑らかな肌に汗が浮き出てつつっと肌を伝って落ちていく。
臍が蠢き、黒々とした陰毛が揺れ、綺麗に開いた花びらがひくひくと生き物のように動く。
蜜壺からくぷ、と白濁が溢れ、白い筋を作って奥まった蕾まで伝い落ちていく。
眩暈がした。
身体中の血が股間に集まって爆発しそうだった。
指が震え、思わず強く擦ってしまいそうになって、柳は慌てて自制した。
弦一郎を気持ちよくさせてやりたい。
自分の手で快感に悶えさせたい…。
自分が気持ちよくなるだけでは、それは自慰と大差ない事になる。
そうではなくて、相手を喜ばせてこそ、セックスという物だ。
「はっ…あ、れんじっ……だ、駄目だッッ」
真田が切羽詰まった声を上げた。
「うっっ…あ、……なんだっ……あ、あ、ああッッ!」
不意に声のトーンが高くなり、上擦った喘ぎになる。
同時に腰の動きが激しくなる。
柳は真田の腰をがっちりと押さえ込んで、指の腹で更に敏感な部分を擦り上げた。
愛撫していた部分がきゅっと動き、蜜壺に入れていた指が痛いほどに締め付けられる。
「うッッッ!」
真田が大きく背中を仰け反らせて、硬直した。
次の瞬間、息を止め強張らせていた身体がどっと緊張を失ってベッドに沈み、はぁはぁと忙しく息を吐き始める。
「弦一郎…」
自分のつたない愛撫に応えてこんなに乱れてくれる真田が愛おしかった。
そっと名前を呼ぶと、真田が潤んだ瞳をぼんやりと開けてきた。
「れんじ…お、れは…」
「好きだ…」
「…れんじ…」
言葉に驚いたのだろうか、真田が目を見開いた。
身体を移動させて上から真田を抱き締め、涙の滲んだ目尻を舌で舐めると、真田が擽ったそうに身動いだ。
「好きだ…。きっと以前から好きだったのだ。…が、男同士だったので気づかなかったのかもしれない…」
小鳥が啄むようなキスを頬や目尻に振らせると、真田が目元を僅かに赤らめた。
「なんだ、それは…」
「…まぁ、気づいて良かったと思う」
「…よく分からん」
「お前はまだ分からなくていい。ゆっくり考えてみろ、弦一郎…」
「………」
真田が眉を顰めて考え込もうとするので、柳はすっと眉間に寄った皺に舌を寄せた。
「まだ考えなくていい。…今は…」
囁いて、開いた真田の脚の間に自分の勃起した物をやんわりと擦りつけてみる。
真田が瞬きをして視線を逸らした。
「もう一度……いいか?」
「……聞くな…」
ぼそぼそと呟いて柳の首に手を回してくる。
柳は微笑した。
「有難う、弦一郎。……では」
最初一気に挿入したぶん、柳は二度目は静かにゆっくりと身体を進めていった。
真田の熱い粘膜を余すところ無く味わうかのように少しずつ馴染ませ、真田の表情を窺いながら身体を進める。
蕩けそうなほど柔らかく熱い粘膜が絶妙に顫動しながら柳の逸物を迎え入れ、二度と離すまい、とでもするかのように絡み付きうねってくる。
「く…ッげんいち、ろう……ッッ」
二度目とは言えたとえようのない快感に、忽ち柳の秀麗な細い眉が寄せられた。
「む…ッ」
真田の方も形の良い眉を顰め、唇を噛んで体内に異物が入ってくる甘い衝撃に耐えている。
ゆっくりと、根元まで深く挿入を終えると、柳は瞑っていた瞳を開いて、身体の下の真田を見つめた。
眉間に寄った皺に唇を押し当て、解すように舌で愛撫する。
「……くすぐったいぞ、蓮二…」
こちらも目を開けた真田が、恥ずかしそうにぼそぼそと囁いた。
「…大丈夫か?」
「あ、あぁ……痛くない……というか、変な感じだ…」
「変とは……どんな感じだ?」
「どんなと言われても……うッッ」
熱くぬめった粘膜の壁をつつくようにペニスを動かしてみると、真田が掠れた喘ぎを漏らした。
切なげに瞳を細め、やや視線を逸らして息を吐く様が妖艶で、ずきり、とペニスが疼く。
「は……っ」
体内で異物がむくりと蠢いたのが分かったのだろう、真田が息を飲んで身体を強張らせる。
柳の首に回した手に力を込め、身体の間で押しつぶされてはみ出た乳房を無意識に揺らして、更に柳の胸に押しつけようとする。
その無意識な媚態に、柳は二度目にもかかわらず、射精感が堪えきれなくなった。
「げんいち、ろう…っ」
声を上擦らせて名前を呼びながら、むっちりと弾力のある乳房ごと真田を抱き締め、ぐっと腰を進めて、熱くうねる膣壁の狭い内部を蹂躙し、唇を噛んで快感に耐えながら、腰を引く。
引くと抜かすまいとするかのように、ぬめった膣壁が絡みついてきて、ペニスを引きずり込もうとする。
「く…ッッ」
秀麗な細い眉をくっと寄せて、射精衝動をなんとかやり過ごし、円を描くように腰を回して、陰毛同士を擦り合わせながら、真田の柔らかな性器を刺激していく。
「はっ…ん、れん、じっ……ッッ!」
掠れた甘い喘ぎが、真田の唇から漏れ出る。
苦しげに顔を左右に振り、喉を仰け反らせ、無意識だろうが、柳の腰に絡めた足に力を入れて腰を引き寄せるようにしてくる動作に、柳はもうたまらなくなった。
これ以上、もう我慢できない。
「すまないッッ」
短く言うと、柳は一気に動き始めた。
「くッ……あ、あぁッッ、れんじッ……な、なんか、変だ……ああぁッッッ!」
真田の身体を壊すぐらいの勢いで腰をぶつけ、真田をきつくかき抱きながら、抽送を続ける。
そのうちに腰全体が痺れたようになり、全身の熱が一気に股間に流れ込んで、それがペニスを駆け抜ける。
「く……ッッッ!」
一瞬硬直したあと、柳は、短く呻きながら、子宮口に叩きつけるような勢いで射精した。
「……………!!」
真田が喉を仰け反らせたまま全身を震わせる。
ふっと目の前が暗くなったような気がして、柳は真田を抱き締めたまま、ベッドに頽れた。
















真田編その13