橘宅の玄関をがらっと開けて中に入ると、庶民的な慎ましい玄関口で荒々しく靴を脱ぐ。
すぐにでも橘とヤりたい所だったが、どうやって話を持っていったらいいのかと、跡部はそこで最大の難問に突き当たった。
とりあえず、中に入ることはできた。
橘の家には誰もいないらしい。それも当分の間。
その間になんとか……。
「何か、俺に用でもあったのか?」
台所に買い物袋を起きながら橘が問いかけてきたのに、頭の中でひたすらどうすればいいかと考えていた跡部は気が付かなかった。
「……跡部?」
「……あ、あぁ……」
「どうしたんだ、なんだかさっきから変だな……。試合の時のお前じゃないみたいだが」
橘が形の良い眉を寄せて言ってきた。
「なにか、うちの不動峰の連中が、氷帝にちょっかいでも出したのか?」
「………あ?」
「……おい、ちゃんと話を聞いてるのか?」
橘が呆れたような声を出した。
肩を竦めながら、買い物袋から牛乳のパックを取り出して冷蔵庫に入れ、次に卵のパックを取り出して冷蔵庫に綺麗に納めていく。
それを傍目で眺めて、跡部は身体の疼きに耐えながら、イライラする心を必死に抑えた。
「…実は頼みがあるんだが……」
「俺に頼み? じゃあ、やっぱり俺に用があったのか?」
冷蔵庫をぱたんと閉めて、今度はテーブルの上にじゃがいもやたまねぎの袋を取り出して起きながら橘が言った。
「今日の夕飯は俺が奢るから、ちょっと頼み聞いてもらえねえか?」
「…俺の夕飯じゃなくて、家族分全部作るんだ」
「家族分全部奢るぜ」
「………お前に全員分奢ってもらう理由がないぞ?」
──いらいらする。
こんな庶民的な話をしている場合じゃない。
「とにかく、時間がねえんだ。お前の部屋はどこだ?」
「……二階だが……」
「んじゃ、二階に上がるぜ。ほら、早くしろよ」
唖然とする橘の手を引っ張るようにして、跡部は二階へ上がった。
橘の部屋は、6畳の畳の部屋だった。
部屋の壁に沿ってベッドが置かれており、きちんと整理された勉強机とテレビラック、本棚のある辺りもごく庶民的な部屋である。
普段の跡部からすれば、そんな貧乏そうな部屋で、などとまず考える所だったが、今はそんな事を考える余裕すらなかった。
媚薬を盛られたわけでもなんでもないのに、相手になりそうな男がいる、というだけで、身体が火照り、汗まで出てきた。
ベッドが目に入った瞬間、もう我慢できなかった。
有無を言わさず橘をベッドに連れて行って座らせると、跡部は乱暴にテニスバッグを投げ出して、ものも言わずに制服を脱ぎだした。
「……あとべ……?」
跡部の唐突な行動に、橘は驚いて跡部を見上げるばかりである。
その間にさっさと服を脱いで全裸になってしまうと、跡部は驚いて硬直している橘の前に跪き、制服のズボンのベルトを緩めてジッパーを下げた。
「……………」
橘がまだ驚いたままで動けないでいる間に、下着の中からまだ柔らかく萎えたペニスを取り出して、おもむろに口に咥える。
喉の奥まですっぽりと咥えて、舌でざらりと擦り上げながら頬を窄めて吸いあげ、歯で軽く噛み、顔を上下に動かす。
「…お、おいっ、……!」
狼狽した橘の声にも構わず、口の中一杯に頬張って吸い上げていると、物理的な刺激が効いたのか、橘のそれは忽ち堅く漲ってきた。
ぱっつりと張り詰めた亀頭を舌でねぶり、ちゅう、と音を立てて吸い、むしゃぶりつくように顔を動かして扱いていく。
十分使い物になってきた所で間髪を入れず橘をベッドに押し倒すと、跡部は橘のペニスを素早く自分の疼く肛門に押し当てた。
一瞬の間も与えず、ずぶずぶとペニスを体内に収めていく。
(………………)
砂漠をさすらって喉の渇きに苦悶していた旅人の喉に冷たい水が流し込まれるような、そんなえも言われぬ快感が跡部の全身を満たした。
「あ、あ……」
肛門が熱く蕩けていき、疼いて痒かった腸内が、嘘のように甘く溶け快感に変わっていく。
橘の腹と己の尻がぴったりと密着するまで深く体内に埋め込んで、跡部は深い満足の溜息を漏らした。
「…あとべ……」
「あ、あぁ……っと、すまねぇ」
自分の快感にばかり夢中になっていて気づいていなかったが、下から聞こえる声に目線を橘に向けると、橘がどうしたらいいのか分からない、というよな複雑な表情で跡部を見上げていた。
「………」
言葉が出ないらしく、口を開いて何か言おうとして困惑したように口を噤み、上から押さえ付けられた姿勢のまま訳が分からない、という目で跡部を見上げてくる。
「わりぃっ、とりあえず、ちょっと俺に付き合ってくれよ」
無我夢中で橘を襲ってしまったが、ここで抵抗されたら困る。
跡部は橘の腰を跨いで体内奥深くまで橘の怒張を埋め込んだままで、橘に向かって手を合わせて拝んで見せた。
「俺が勝手に動くからよ、すまねえなっ」
合わせていた手を橘の両脇につくと、ぐっと腰を浮かせて、ペニスを引き抜き、体重を掛けてぐっと腰を落とす。
ずうん、と重く形状しがたい快感が下半身から背筋を閃光のようにかけぬけて脳髄まで達し、跡部はあまりの気持ちよさに、歯を食い縛って呻いた。
「はっ……う、んっっ…くっっ……!」
今まで飢えに飢えていただけに、たとえようもなく気持ちがいい。
堅く目を閉じて、腰を思いきり上下に振り、太く堅い肉棒を体内に出し入れしていく。
それだけなのに、身体全体が宙に浮き上がり、蕩けていってしまいそうに快感だった。
「……あ、あっ……くっっっ!」
忽ち絶頂が訪れ、跡部は喉を仰け反らせて、ぐっと腰を落とした。
深々と貫かれると同時に、己のペニスから勢いよく粘液が迸るのを感じる。
(…………!!)
全身が痙攣し、息がつけず、ふらっと眩暈がした。
崩れ落ちるように橘の身体の上に俯せになり、はぁはぁと息を切らして身体を弛緩させる。
頭の先から脚の爪先まで、快感というエキスが行き渡って、生き返ったようだった。
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