何度も口付けを交わして、真田の身体の緊張が十分に解けたのを確認してから、体内に埋め込んだままだった3本の指を掻き回すようにしながら言うと、真田がびく、と身体を震わせた。
「入れたい……」
「…………」
柳の情熱が分かったのだろうか、真田が何か言い足そうに唇を震わせ、それから身体の力を抜くと、柳の首に手を回してきた。
「弦一郎……」
「………」
「いいか?」
「………何度も聞くな……来い……」
聞こえるか聞こえないかぐらいの囁き。
低く掠れた甘い声音に、全身が疼いた。
指を引き抜き、真田の引き締まった堅い太腿を押し広げて抱え上げると、柳は自身を奥まった蕾に押し当てた。
真田が瞳を固く閉じ太い眉を寄せるのが更に興奮を誘う。
ぐっと体重を掛けて、柳はゆっくりとペニスを沈めていった。
狭い入り口を体重で無理矢理押し開き、絡みついてくる内壁を肉棒で抉っていく。
「くっっっっ!」
真田の、押し殺した呻きがぞくぞくと興奮を煽る。
先ほど女体の真田を抱いた時とはまた違う、これもまたえもいわれぬ快感だ。
堅い男の身体を抱いているのに、興奮がどんどんと高まり、我慢できなくなる。
真田の内部は女性の時よりもずっと狭くきつかった。
ペニスが千切られそうなのを無理矢理に貫いて根元まで深々と挿入する。
「………ッ」
真田の身体が痙攣したように震えるのを、上から宥めるように抱き締めて、柳は深い皺を刻んだ真田の眉間に口付けを落とした。
「弦一郎……大丈夫か?」
熱い粘膜にきつく締め付けられた自身からの快感で、目の前が霞むような気がする。
自分ももちそうになかったが、真田の方が心配だった。
快感を堪えて問いかけると、真田がうっすらと瞳を開いた。
深い湖のような潤んだ瞳にずきん、と股間が更に膨れあがる。
「聞く、な……れんじ……このぐらい、なんとも、ない……」
甘く掠れた、官能的な声音に、眩暈がした。
「げん、いちろうっ…」
耐えきれない衝動が襲い、柳は激しく律動を始めた。
「くぁっっ……うッッ……んむっっ…」
さすがに痛いのだろう、真田が眉を寄せ、苦しげに呻きながら顔を左右に振る。
それでもやめられない。
真田の熱い体内に取り込まれ、身体全部が真田の中に入り込んで溶けていってしまいそうだ。
「げんいちろうっ、好きだっ!」
できるだけ真田に苦痛を与えないように、先ほど知った真田の感じる部分をペニスで突き上げるように腰を回す。
「はっ……あ、くっっ……!」
真田の声音が微妙に変わった。
明らかに痛みだけではなく快感を感じている、焦れったいような堪えきれないような濡れた声。
その声を聞いた途端、迫り上がってくる快感を止めることができなくなった。
「く………ッッッ!」
薄い唇を噛み締め、真田の体内深くペニスを突き入れると、最奥に欲望を迸らせる。
真田の仰け反った喉仏が大きく上下し、胸筋がぐっと迫り上がる。
目を閉じ体内の欲望を一滴残らず真田の中に流し込んで、漸く柳は息を吸った。
酸素不足で目の前が暗くなった。
身体の力が抜け、弛緩したまま真田の上に崩れ落ちる。
暫くはぁはぁとただ息を吐き、全身を浸す快感の余韻に夢見心地だった。
幸福感にたゆたっているようなそんな心地がする。
身体を繋げたままで永遠にこうしていたいような感じだ。
しっとりとした張りのある肌に唇を押し当てて、柳は真田の胸筋に舌を這わせた。
「蓮二……」
掠れた甘い声に、幸福感が更に押し寄せてくる。
「好きだ、弦一郎…」
顔を上げて、手を伸ばし、真田の額に張り付いた前髪を払ってやると、真田が忙しい息を吐きながらうっすらと瞳を開けた。
不思議な気がするが、こうして二人で繋がっているのが一番自然と思えるような、そんな幸福な気持ち。
ふと互いの腹の間がぬるぬるとしているのに気づき、身体を起こすと、真田が射精したのだろう、白濁が下腹を濡らしていた。
性の匂いが立ち上ってきて、そんな匂いにさえもぞくりと欲情する。
名残惜しくて、柳は再度真田の唇に己のそれを押し当てた。
深い口付けを交わすと、そのまま互いが解け合ってしまうような心地さえした。
「今日はすまなかった…」
身支度を整えると、既に辺りはすっかり暗くなっていた。
柳家の玄関で、真田は頭を下げた。
この家に来た時には浴衣を着ていて、しかも女だったが、今は男に戻って、跡部の家から持ってきていた自分の服に着替えている。
「いや、…俺の方こそ、有難う」
先ほどの激しい情欲は治まっていたけれど、今は穏やかな暖かな気持ちが二人の間に流れていた。
「弦一郎…」
つ、と手を伸ばし、真田の顎に触れる。
ほんの少し上向かせて、軽く触れるだけの口付けをする。
「蓮二……」
理性が戻った真田が、恥ずかしげに口籠もる。
「これからもずっと一緒だ、弦一郎…」
「あぁ、そうだな…」
「明日は学校で」
「…が、学校で、……するのか?」
「はははっ、なんだ、それは?」
学校で会おう、と言ったつもりだったのに、真田が驚いてとんでもない事を言ってきたので、柳は破顔した。
「学校でもしたいのか、弦一郎…」
「む、ち、違う……その……」
自分が勘違いをしたのが分かったのだろう、太い眉を寄せて唇を噛む動作が愛おしい。
柳は再度軽く口付けを落として囁いた。
「勿論、俺もしたい……学校で誰もいなかったら……これぐらいは、いいだろう…」
「………」
唇をチュ、と食むと、真田が表情を和らげた。
「うむ……」
「もっと違うことは、また俺の家でな……明日もまだ家族は旅行から帰ってこない……泊まりに来ないか?」
「………」
さっと真田の目許が紅くなった。
瞳を細めて見守ると、真田が微かに頷く。
「では、明日の夜も……」
真田の上唇をなぞるように舐め、唇を押し当てて名残惜しげに離す。
「あぁ……では…」
そう言って何度も振り返りながら去っていく真田の後ろ姿を、柳は彼の姿が見えなくなっても、ずっと眺めていた。
真田編終了
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