生贄
 《4》












「う……っっ!」
不意に、信じられないような所に跡部の指が触れてきた。
「…よせっ!」
思わず腰を動かす。
が、跡部が上から腰をがっちりと押さえてきた。
「動くなよ。…痛いぜ?」
くすくす笑われて、かっと頭に血が上る。
だが、次の瞬間、ずずっと奧孔に指が埋め込まれて、手塚は息を飲んだ。
「綺麗な孔だぜ…」
跡部の掠れ声が淫靡に響く。
「……ああっ!」
手慣れているのだろうか、跡部が的確に突いてきた部分から、ぞくぞくとなんともいえない衝撃が手塚の背筋を走り抜けた。
「感度もいいな…」
あっという間に血流が下半身に流れ込む。
先ほどまで萎えきっていた自分の性器がむくむくと勃起して起きあがってくるのを、手塚は呆然と見下ろした。
「敏感で、いい身体ですよ、監督」
「そのようだな。…ますます楽しみになってきた。少し解してやれ、跡部」
榊がスーツのズボンの前盾を緩めながら、近づいてきた。
びくっとして思わず怯えた視線を上げると、榊と目があった。
「心配しなくていいよ、手塚君。優しくしてあげよう…」
ぞっと全身が震える。
「怖がってるのか、手塚。…可愛いぜ…」
跡部が瞳を細めた。
「お前のそういう様子、ますますそそるな…」
いいながら跡部が小瓶を取り出して、とろり、と手に中のピンク色の液体を垂らすのを、手塚は全身を細かく震わせながら見上げた。
ぬるっとした指が、再度秘孔に埋め込まれる。
ずぶ、と押し入ってきては抜かれ、なんとも言えない吐き気が手塚を襲う。
「よ、せ、跡部……っっ」
必死で震える声を紡ぐが、そういう様子は跡部を悦ばせるだけだった。
「そろそろ、いいだろう…」
手塚の様子や、跡部が手塚の尻を執拗に弄る様を背後から眺めていた榊が、言葉を発した。
「跡部、手塚の脚を押さえていてくれ」
しゅる、と両足を拘束していた紐を解いて榊が言う。
「暴れられると面倒だからな」
「了解しました」
跡部が頷き、手塚の頭の方に回り込むと、両足首をがっちりと掴んでぐい、と上に引き上げた。
「……ッッ!」
まるで赤子がお襁褓でも変えられるような無様な格好にさせられ、恥ずかしい部分が、思いきり露わにされる。
「ほう……」
ギシ、とベッドを軋ませて上がってきた榊が、手塚の下半身を眺めてふっと笑った。
「上品で、美しい。さすが手塚君だ。…そそるよ…」
榊の言葉に背筋が凍る。
わなわなと総毛だって、蒼白な表情で見上げると、榊の落ち着いた黒い瞳がすうっと細まった。
「君を手に入れることができるなんて、光栄だよ」
大きな身体が覆い被さってくる。
手塚は息を飲んだ。











「うあ………ッッッ!」
身体が二つに裂けるかと思った。
衝撃が、信じられないような所から、背筋を駆け抜け、脳に容赦なく突き刺さってくる。
手塚は血走った瞳を見開いて、喉を潰して声を上げた。
ずず、と内臓が押し上げられる。
脚の付け根から二つに裂けて、その内部に、深く深く、熱い灼熱の楔が打ち込まれる。
「あ……あ、う……ッッ」
涙でぼやけた視界に、跡部の顔が映った。
灰青色の瞳を細め、自分を陶酔した表情で見下ろしている。
「いい顔だぜ、手塚…」
テノールのよく響く声が降りてくる。
「はっ……あ……ッッ!」
身体が激しく揺さぶられ、ずっずっと体内に異物が埋め込まれては抜かれる。
そのたびに、柔らかく傷つきやすい繊細な部分を、ずくずくと堅い棒で擦られる。
焼け付くような痛みと共に、何とも表現しようのない身体の奥深くから湧き上がってくる快感。
その二つが混ざり合う。
榊の堅いものが体内のどこかを突くたびに、ずしん、と脳天までえもいわれぬ感覚が突き上げてくる。
「うっ……くッッ…ぁあッッ」
「へぇっ、勃ってるじゃねえか、手塚…」
前立腺を刺激された事で、手塚のそこは勃起していた。
揺さぶられるたびに、形の良い其処がびくびくと頭を揺らし、先端から透明な涙を溢れさせる。
榊が深く楔を打ち込む。
美しく筋肉の付いた腹が波打ち、手塚は喉を仰け反らせてはぁはぁと忙しく息を吐いた。
全部熱湯にでも浸かったように熱い。
全身の神経が、榊が押し入っている部分に集中し、熱くて痛い。
頭が爆発しそうだ。
焦点の合わない瞳に跡部の顔が映る。
覆い被さって自分を興味深そうに観察している。
その視線を意識すると、痛みで忘れかけていた羞恥が蘇ってきて、手塚は顔を背けた。
無様な格好で、しかも自分でさえ見たこともないような奥まった場所を晒け出されている。
さらに、そこに他人の性器が出し入れされている。
それを跡部に見られているのだ。
突然羞恥が全身を焼いて、手塚は渾身の力を込めて跡部を振り払おうとした。
「活きがいいな…」
激しく腰を動かしながら、上擦った声で榊が呟く。
「抵抗するなよ」
と言いつつも、跡部も嬉しげに更に手塚を押さえにかかる。
「しっかり押さえていてくれ」
二人の声が自分の身体の上で交差する。
ずっずっと粘着質の音がして、更に足が大きく広げられる。
榊が不意に勃起した手塚自身を握りしめてきた。
「うっ…!」
突如激烈な快感が握られた部分から背骨を駆け上ってきた。
手塚は背筋を海老のように反り返らせて頭を激しく振った。
榊が満足げに笑う。
手塚の中を穿つ動きが激しく深くなる。
やがて一際強く手塚の中に怒張を叩きつけると、榊は手塚の体内に精を放った。
どくどくと放ちながら手塚自身を扱く手は緩めず、根元から搾るように先端まで扱き上げる。
そんな風に他人に扱かれた経験などない手塚はひとたまりもなかった。
榊の射精と連動するように、手塚の先端から白濁がほとばしり出る。
「可愛いヤツだ」
榊が満足そうに息を吐きながら言い、ずるり、と逸物を引き出した。
後ろからの刺激と射精をしたことによって、手塚はほとんど茫然自失していた。
榊が離れていって、体内にぎちぎちと充足していたものが無くなる。
身体の力が抜け、ベッドにだらしなく身体を沈ませる。
「いい味だ。…やはり初物はいい。締まりが違うな」
服装を整えながら、榊が言う。
「では跡部、お前の番だ」