◇Vita Rosa(ヴィータローザ) 3   






シャマルの髭が少しちくちくする。
唇が吸い付いてきて、ツナの唇に柔らかく触れては強く押しつけられる。
舌がツナの歯列をつついてくる。
ツナは驚いた。
顔を背けようと力を入れたが、シャマルがツナの顎をがっしりと掴んでいて離さない。
大人の腕の力には到底叶わない。
顎を上向けられたまま、至近にシャマルの顔を見て、ツナは思わずぎゅっと目を閉じた。
ぬるりと舌が歯列を割って内部へと滑り込んでくる。
ツナの歯を一なぞりした後、ツナの舌を巻き取るように絡み付いてくる。
「──ン、…ん、ふ…ぁ…ン…ッ」
顎を掴まれただけでなく、もう片方の腕がツナの背中に回ってきた。
身体も強く抱き締められて、ツナは身動きが取れなかった。
キスなんて、誰ともしたことがない。
それなのに、……今してるのって、これって……キス、だよな。
キスするなら……京子ちゃんと、なんて……勿論、そんなの叶うわけ無い遠い遠い夢だけど、でもちょっと想像してみたり、したんだけど。
でも、今、キス、してる。
それも、シャマルと……。
しかも、……普通のキスじゃない。
こんな、舌が入ってくるようなキス……。
それは、ツナの予想の範疇を越えていた。
唇がなんだか焼けるように、熱い。
粘膜同士の絡み合う感触にぞくりと背筋が震える。
「……や、……ンっ…んん……ふっ、ぁン…」
シャマルの舌が、ツナの舌を絡めて引っ張ってきた。
引っ張られてシャマルの口の中に吸い込まれると、歯で軽く噛まれる。
ぞく、と背筋から脳天にかけて甘い痺れが走った。
「ン…ン……ッッ…」
なんだか、身体も熱い。
口の中も、喉も───熱くて、頭がぼんやりする。
唾液を吸い上げられて深く口付けられたまま、ソファに押し倒される。
シャマルの体重が自分の身体にかかってきて、ツナは思わず目を瞑った。
なんか、身体が変だ。
逃げよう、と思っているのに、身体が動かない。
動かないどころか、熱くて、火照っている。
「ンぁ…ァン……ッ…」
強く吸い上げられ、舌を噛まれ、身体が震える。
ごく、とシャマルの喉が動いて、唇が漸く離れる。
最後にシャマルの舌が、ツナの唇をなぞるように舐め上げてきた。
「…気持ち良かったか…?」
耳許で囁かれて、ツナはぼんやりと目を開けた。
よく、分からない。
身体中が火照っていて、ふわふわ、お湯の中にでも浸かっているかのようだ。
とろんとした目つきになっていたのだろう、シャマルが黒い双眸を細めた。
「薬が結構効いてきたみたいだな…」
「……くすり…?」
「正気じゃ抵抗もあるだろうと思って、媚薬を少し飲ませたのさ。どうだ、抵抗する気とかなくなってるだろ?気持ちよくて、身体が疼いてこないか?」
「………え……」
そう言えば、──身体が火照っているのは事実だ。
それに、キスされても、いやじゃない。
それどころか、
(………)
確かに身体が疼いていた。
正確に言えば、下半身が興奮している。
勿論ツナだって健全な男子だから、自分の性器が勃起するのも経験していたし、一人エッチだってたまにはしていた。
が、今はそれよりももっと…熱くて疼いていて、今までに感じた事の無いような興奮だった。
「……あ、……は、ずかしいよ…」
「恥ずかしいなんて言ってる場合じゃねぇだろ。お前の方で誘惑しなくちゃならねぇんだぜ?」
「ゆう、わく…?」
「そうだ。ボスが守護者を誘惑して肉体関係に及ばないと駄目なんだからな?坊主にはそれだけのテクを身に付けてもらわねぇとな」
「……そ、んなの、無理…」
さっき飲んだジュースが媚薬だったのだろう。
どこか頭がぼんやりとして、言葉がよく出てこない。
「大丈夫だ。坊主にはそれだけの素質がある。今だって十分色ぽいぜ?愛らしくて可愛いってやつだな…。キスだって、良かっただろ…?」
「………うん…」
もしかして、媚薬には快感に素直になる成分も入っているのだろうか。
ツナがこくりと頷くと、シャマルが笑った。
「そういう所がすげぇそそるぜ、坊主。…じゃ、レッスン2と行くか」







「2……?」
「ああ、そうだ。オレもなんだか乗り気になってきたしな。坊主相手にちゃんと教授できるかどうかちょっと自信なかったんだが、坊主が十分色っぽくて可愛いから大丈夫だ」
「……オレ、可愛くない、よ…」
「まぁ、自分から可愛い、とか思ってるような鼻持ちならねぇヤツは女でも相手したくねえからな、そのぐらい謙虚な方が可愛いぜ?さて、と…じゃ、ベッド行くか…」
「……わっ!」
不意に身体がふわっと宙に浮いた。
思わず目をパチパチさせて見回すと、シャマルの腕に抱き上げられていた。
「坊主軽いなぁ…」
シャマルの苦笑とともに、部屋の中央にある大きなダブルベッドの上に身体が降ろされる。
仰向けになると、天井の複雑な文様や、教会のような天使の西洋絵画が目に入った。
「まずは、坊主の身体を診察、だな…」
冗談めいた言い方で、シャマルがツナのシャツの釦に手を掛けてきた。
ゆっくりと一つずつ外しに掛かる。
「へぇ……可愛いもんだぜ。胸がねぇのは残念だが、さすがボンゴレ…って関係ねぇか…」
くすっと口端に笑いを浮かべ、シャマルがツナの露わになった胸を見る。
媚薬のせいで息が忙しなくなっているせいか、ツナの胸は大きく上下し、あまり日に焼けていない白い肌がほんのりと桃色に色づいていた。
小さな乳首が、やはり媚薬のせいなのだろう、ぷくりと勃ちあがっている。
そこにシャマルは節くれ立った太い指を這わせた。
「やッ、……んぁ…くすぐ、ったい……!」
びくん、顎を仰け反らせて、ツナは力無く顔を左右に振った。
純白のシーツの上に、ツナのつんつんとした茶色の髪が乱れる。
弄られている部分が擽ったい。
擽ったくて───触れられた部分からの刺激が足の爪先まで突き抜ける。
逃げようとか、抵抗しよう、という気持ちにはならなかった。
火照った身体にシーツが心地良く、更に触れてくる指の微妙な刺激がたまらない。
「……あ、あぁ…ンッ」
思わず甘い声が漏れた。
自分の声じゃないみたいで、ものすごく恥ずかしい。
けれど、気持ちが良くて、なんだかふわふわ、どこかに身体が浮いていってしまいそうだ。
「敏感なんだな、坊主……すっかり膨れてるぜ…」
勃起した乳首を指の腹で捏ね回しながら、シャマルが黒い眸を細めた。
これなら悪くねぇな、とシャマルは思った。
これだけ色っぽく可愛らしい反応をするのなら、相手が男でも十分興奮できるというものだ。
あどけない表情が、そのあどけなさのまま妖艶な色気を醸し出している所がぞくっとくる。
どんな男だろうと、このツナの表情を見たらすぐにでも犯したい、と思わせられそうである。
(さすが、ブラッドオブボンゴレ……)
とは関係はないのかもしれないが。
「下はどうかな、坊主……」






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