「へぇ、獄寺って慣れてるんだなぁ…」
ベッドで邪魔だとばかりに着衣を脱ぎ始めた獄寺を眺めて、山本が感嘆したような声で言ってきた。
「は?テメ−も脱げよ。やる気ねぇんならやめるぜ」
「はい、脱ぐ脱ぐっ。ちょっと待っててな」
慌てて山本も着ていた制服を脱ぎだした。
ネクタイを解き、シャツの釦をもどかしげに外すと一気に脱ぎ捨て、ズボンのベルトをカチャリと外して下着毎引きずり下ろす。
(やっぱりいい身体してんな…)
自分が貧弱なのを内心気にしているだけに、獄寺は山本のすらりとした筋肉質の裸身を見て、眉間に皺を寄せた。
火薬の扱いについては自分の右に出る者はいない、という自信はあるが、体格的にはどうしても小柄な方だ。
山本の方が自分よりかなり背が高いし、きっと体重もあるのだろう。
睨み付けていると、その視線に気付いた山本が黒髪をくしゃっとかき混ぜて照れ笑いをしてきた。
「なんだよ、オレの裸、そんなに格好いい?」
「……果てろ」
捨て台詞を吐いて、自分もさっさとネクタイを外してシャツを脱ぐ。
全裸になると、どさっとベッドに仰向けに寝転がって、顎で山本を呼んだ。
ベッドもあらかじめこの部屋の調度品として設置されていたもので、二人でも暮らせるようにダブルの広さがあった。
純白のシーツに軽い羽毛布団が乗っているものだが、羽毛布団ははねのけて、シーツの上に寝転がる。
「あー、獄寺、何かその…肛門柔らかくするものとかないと、尻が痛いんじゃないのか?」
山本がダイレクトに言ってきたので、獄寺はさすがに顔を赤くした。
(コイツ、羞恥心ってものがねぇのかよっ…)
「ンなもんうちにあるかよ。テメェ痛くしたら殺す!」
「そう言われてもさ……擦り傷用のクリームあるから、これでいいか?」
ごそごそと自分のバッグを探って、山本が擦り傷用塗り薬のチューブを取り出してきた。
「じゃー、よろしく……て、まず最初に何やったらいいかなぁ。…すぐにでもやりたいけど、それじゃ、獄寺に殺されちゃいそうだしな…」
ぶつぶつと言いながらベッドにあがってきた山本の股間を、間近で初めてまじまじと見て、獄寺は内心げっとなった。
───かなり、大きい。
裸になった事で興奮しきったのか、すっかり戦闘状態になっている。
外見爽やかな山本らしからぬ、凶悪な面構えをしている。
(……スポーツマンってそういうもんかもしれねぇ…)
眉間の皺が深くなる。
確実に自分の負けだ。
自分の股間を眺め下ろす。
イタリア人の血が四分の三を締める獄寺のそれは、色白で形良く上品だが、些か堅さに欠ける。
長さには自信があったが、山本のを見た瞬間、負けたと思い知らされた。
(……つうか、なんでこんな馬鹿なことしてんだよ……)
ふと、理性が戻ってきそうになって、獄寺はぎり、と山本を睨んだ。
「そんな顔しないで、っと、とにかく尻を柔らかくしないとだめだな…」
獄寺の視線など意にも介さず爽やかに笑って、山本が獄寺の身体を不意に反転させてきた。
「……ッ」
俯せにさせられ、次の瞬間腰を掴まれて高く上げられる。
「…へー……オレって、他人のこんなトコ初めてみたけど……獄寺のホントに綺麗だな…」
ぬる、と冷たい感触がし、獄寺は背筋を震わせた。
尻の中心に、どうやらクリームを塗られたらしい。
枕に顔を埋める格好になって、獄寺は羞恥と情けなさに眩暈がした。
今からでもやめられるのではないか。遅くない。
こんな恥ずかしくてばからしい事、すぐにやめれば……。
「……く、ッ!」
と思った瞬間、何か暖かな異物──指らしい──がクリームの力を借りてぐっと挿入されて、獄寺は喉を詰まらせて呻いた。
シーツに手を突き、肩胛骨を浮かせて下半身からの刺激に耐える。
何とも言えない感触だった。
うずうずするような、じりじりするような、それでいてもっと欲しくてたまらなくなるような…。
無意識に尻を突きだしてしまったのだろうか、背後で山本が軽く笑い声が聞こえた。
「獄寺も気持ちいいみたいだな…。こっちがまた大きくなってるぜ?」
急に自身を掴まれて、びくん、と獄寺は肩を大きくゆらした。
握られた性感帯から、電撃のように快感が脳まで突き刺さってくる。
「獄寺のこういう姿見てると、すげぇ興奮する。……夢みたいだなー」
などとふざけた事を抜かしながら、山本が獄寺の後孔に更に指を追加してきた。
ぐり、と内部で指の関節を曲げられ、ずきんと甘い頭痛がした。
全身が細かく震え、奥歯ががちがちと鳴る。
こんなに快感に弱かっただろうか。
───おかしい。
イタリアに居たときはこんな事はなかったはずだ。
やはり、日本に着て、こういう事からずっと離れていたからだろうか。
よく分からない。
頭が混乱してくると、何も系統だって考えられなくなってきた。
今はとにかく、ダイレクトに脳を犯してくる、この堪え切れない快感に身を任せるだけだ。
「…く、…ぁ………ッッ」
内部をまさぐっていた指が、どこかを擦ったらしい。
獄寺は呻きながら背中を瑞枝のように反り返らせた。
「ここ、気持ちいい場所なんだー?痛くないみたいだな、獄寺」
それはもう、痛くなんかない。
それどころか、気持ちよくて焦れったい。
「おい、…も、いいから……ッ」
山本はなかなか次に進もうとしなかった。
いつまでも後孔を弄って、クリームでべたべたにしたり、内部に指を差し入れては抜き、柔らかくしようとしているようだった。
獄寺の方が我慢できなくなってしまった。
「…いい加減にして、突っ込めよっ!」
既に指が3本入っていたが、そんなものでは物足りなかった。
もっと、自分を揺さぶるぐらい、大きなモノが欲しい。
こんな中途半端な快感じゃ、今更物足りなくて、我慢できない。
「獄寺って…結構積極的なんだなー」
などと、山本が感心する声が聞こえたが、獄寺はそれどころではなかった。
はぁはぁと息を継ぎ、枕に顔を押しつけて銀糸の髪をシーツに乱し、振り返って肩越しに山本を睨み付ける。
「テメーだって、もういい加減勃ってんだろ?ほら、来いよ!」
焦れったくて、自分から尻を突き出してしまった。
「そうか?じゃー…」
山本が笑い混じりの声で言い、獄寺の白く小さな尻をがっちりと掴んできた。
「すっげぇ我慢してたから、すぐイっちゃいそうだけど、ごめんな?」
なんでそこで謝る…と、思った瞬間、
「………ッッッッ!」
後孔から重く鋭い衝撃が襲ってきて、獄寺は喉を詰まらせ、声にならない悲鳴を上げた。
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