◇Vita Rosa(ヴィータローザ) 9   







「………は?」
ファミリーのボスとして威厳も出てきたディーノだが、さすがにツナの言葉は想像を絶したらしい。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
「……えっと、なんて言ったんだ?」
「……こんどーむつけて、あなるせっくすしてください…」
「………」
ディーノの琥珀色の綺麗な眸が、ツナの顔を見、それからツナが差し出したコンドームの袋とローションの瓶を眺める。
「オレと、ツナで…?」
「そ、そうなんです…」
かぁっと頬が熱くなる。
ディーノが戸惑うのも無理はない。
やっぱり言わなければ良かった。
「…なんか、理由あるんだろ。…ツナはそういう事言う子じゃねぇし…」
ディーノが首を傾げながら言ってきた。
「…理由は聞かないでください。あ、その、だめならだめでっ、いいんです!ごめんなさいっ!こんな変なお願いしちゃってっ。あの、オレも、こんなお願いなんておかしいって思うんです。ディーノさんに失礼だしっ、申し訳ないしっ、あの……怒ったらごめんなさいっ」
「いや、怒ったりはしねぇけど……ちょっと驚いた」
ディーノが金髪の頭に手をやって笑った。
「ツナはそれで、アナルセックスの経験あるのか?」
突然本題に踏み込まれて、ツナは真っ赤になった。
「えっと……1回だけ…」
「オレとやりたいのか?」
「………」
やりたいのか、と言われると返答できない。
普通はこういうのは好きな者同士でやるものだろうし。
「うーん、なんとなく分かったぜ。ファミリーのボスとしていろいろな経験を積まなければならねぇって事だな?」
ちょっと違うが、まぁ、趣旨は同じかも知れない。
「オレも男相手は初めてだが、…なんかボンゴレファミリーは進んでるんだなあ」
ディーノ感心したような声にも恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
「…いいぜ?」
「………え?」
「ツナ、可愛いしよ。結構できそうな気がする。何事も経験だしなー」
「え、え?」
「ゴムつけねぇと駄目なのか?」
「あ、はい……その、ごめんなさい…」
「オレってこのために呼ばれたんだな?」
「…………ごめん、なさい…」
わざわざイタリアから日本にやってきてくれたというのに、用件がツナとのセックスではあきれかえるのも無理はない。
「いいってことさ。リボーンの差し金だな?また何か修行なんだろ?変な修行って言えば変だが。…ま、深く考えるのはやめだなっ」
ディーノが爽やかに笑って軽々とツナを抱き上げた。
「うわぁ!」
「じゃあ、ベッド行こうぜ……飯も食ったし、いい感じでできそうだ…」
「ディ、ディーノさん…本当に、いいの?」
「ツナこそ、オレでいやだとか言うなよ?」
「う、ううん、そんな事っ、だってディーノさん格好いいし……」
「そうか…?」
ディーノが金色の目を細めた。
ベッドに下ろされて、ツナは不安げにディーノを見上げた。
一応ディーノがしてくれる事になったようだが、果たしてディーノを満足させられるのだろうか。
もし途中で興ざめだ、とか言われてやめられたらどうしよう。
いや、それはそれでいいのだが……あぁ、なんだか頭が混乱してきた。
……とにかく、今回は自分から誘惑しろ、とリボーンに言われている。
ツナはおずおずとディーノの首に手を回した
「ディーノさん……」
「お、積極的だな、ツナ…」
ディーノが眸を細め、ツナに合わせてツナを抱き締めてきた。
ちゅ、と軽く唇が触れ合って、思わずツナが目を閉じると、ディーノの唇が深く吸い付いてきた。
「ふぁ……あ、あ…」
舌がツナの口腔内に潜り込んできて、顎裏を這い回り、ツナの舌を捉えるとねっとりと巻き付いてくる。
強く吸い上げられ舌が痺れ、身体の力も抜ける。
角度を変えて何度も深く座れ、じぃんとした痺れが唇から全身へ伝播していく。
シャマルとのキスもそうだったが、大人のキスは違う。
キスだけで身体がとろけていってしまいそうになる。
(あれ、今日は媚薬とか使ってないはずなんだけど……)
前回の残りが身体に影響を与えているのだろうか。
ツナはとろんとした眸でぼんやりとしてくる頭の中で思った。
なんだか身体が変だ。
キスしてるだけなのに、身体の芯が痺れて疼いてきた。
なんであろう。
…もしかして、セックス好きな身体に…なっちゃってたりして。
ま、まさか。まだ1回しかやってないし。
そりゃ、……気持ちよかったけど…
でも、もしセックス好きになっちゃってたらどうしよう。
「獄寺クン、今日もやろうね」とか獄寺クンの事とか誘っちゃうようになっちゃったりするのだろうか…
───いやいやいやいや、絶対そういう事ないから!
自分で想像してツナは青くなった。
「どうした、ツナ…?」
ツナがぼんやりしていたからだろうか、深く口付けをしていたディーノが唇を離してそっと囁いてきた。
「お前の唇、柔らかいんだな……可愛いぜ…それに、頬も赤くなってるし……ツナ、お前、結構セックス好きなのか?」
「はい……?」
「オレは嫌いじゃねぇが、……今までそんなに自分からしたくてやったって事がねーんだ」
「……ディーノさん、モテるから、女の人がほっとかないんですよね…」
ディーノが肩を竦めた。
「ツナはどうなんだ?」
「…どうって、オレ、女の人と経験した事無いですし…」
「じゃあ、童貞か?」
「…………」
結構ディーノがずけずけと聞いてくるので、ツナは更に顔を赤らめた。
「可愛いなぁ。なんかお前見てると、興奮してきた。…変な感じだぜ…」
「ディーノさん……ぁ、やっ、ちょ、ちょっと……っっ!」
不意にディーノがツナの股間に手を伸ばしてきたので、ツナは驚いた。
「ん、なんだ?」
「なにって、その………ディーノさん……」
「はは、ツナって可愛いじゃねーか……なんだかすげぇやる気になってきたぜ」
「え、そ、そうなの…?」
「ツナ……」
「……あ、や…やぁ…ッん…」
ディーノがツナの股間をぎゅっと握りしめてきたので、そこからのずうんとした痺れにも似た疼きがツナの背筋を駆け上って、ツナは呻いた。
「声が可愛い。…表情も可愛い……そんなツナにセックスしてくれってお願いされたら、断れねーよ。…服、脱ごうな?」








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