◇Vita Rosa(ヴィータローザ) 10   








「……あ、はい…」
ディーノがツナの服に手を掛けてきたので、ツナは素直に従った。
広く大きな豪奢なベッドの上で服を脱がされるのは不思議な気分だった。
不思議といえば、どうしてこう抵抗もなく誰かとセックスしようとしているのか、それも不思議だった。
リボーンが言ったから…だけでもない気がする。
(オレって……こういうの、もしかしてすごく好きなのかも…)
ツナは内心自分でそう考えた。
なにしろ、ディーノを誘惑してセックスに持ち込む、というような事をしようとしているのだ。
男とやるのは2回目だというのに…。
(もしかして………いやらしいのかな、オレ……)
などとツナがちょっと考え込んでいる間に、ディーノも来ていたバスローブをさっさと脱いでしまった。
「ツナ……」
「……!」
ディーノの逞しい裸体を目の前にして、ツナは目をパチパチさせた。
美しく均整の取れた肢体に、浮き出た刺青が色気を増している。
濃い金髪に縁取られた下半身は既に半勃ちしており、その大きさはやはりイタリアの男性らしく、雄々しく巨大だった。
既にシャマルのものを見て慣れていたはずのツナであったが、やはり他の男性…しかも成人男性のものを見ると、恥ずかしくて思わず目をそらしてしまった。
それにしても、身体は均整が取れていて西洋の彫像のようだし、端正な美しい顔にきらきらした金髪。
(…ディーノさんって、モテるんだろうなぁ…)
などとぼんやりたわいもない事を考える。
自分は、というと、貧弱な身体に童顔。
どう考えてもモテそうにない。
なんとなく自信がなくなってディーノを不安げに見上げると、ディーノがごくり、と唾を飲んだ。
「そういう顔するとすげぇ可愛いぜ。……誘ってるのか、ツナ…」
「え?」
不意にベッドに押し倒されて、視界が回る。
「お前って本当、なんていうか……そそるよな。今まで知らなかった。…そんな可愛い顔してたら、どんな男だってたまらなくなるぜ…?」
とは冗談ではなく真実らしい。
真面目な顔をしてディーノが言ってきた。
「なんでオレとセックスしてぇのか分からないけど……なんだか幸運な気がするぜ。…ツナ…確か2回目って言ってたな…最初は誰とやったんだ?」
「え、……えっと、シャマル……に教えて貰った…」
「……おい、あのエロ医者にか?」
ディーノが顔を顰める。
「いい役回りだな。…よし、シャマルに負けねぇように頑張るぜ」
何故かディーノがやる気になっている。
自分なんかを抱いても面白くも何ともない上に、面倒くさいと思うのだが…。
しかし、ディーノの考えは違うようだ。
ディーノは実際の所、リボーンから日本に至急来てくれ、と言われた時は何かボンゴレ関係で深刻な事態でも起きていたのか、と思って心配していた。
が、どうやらそうではなく、それどころか、真面目に考えると非常にばからしい用事で呼ばれた事になる。
まぁ元々鷹揚で細かい事を気にしないディーノだから、別に用事がなくても呼ばれて日本に来るのも悪くない、と思う方だが。
ついでに観光旅行でもして帰ればいいだけの話だ。
しかし、来て早々、リボーンからツナの頼みを聞いて遣ってくれ、と言われて待っていた所にツナが言ってきたのが、「コンドームつけてアナルセックスをしてくれ」だ。
これほど荒唐無稽、想像も絶する頼みもない。
……とは思っていたのに、なぜかツナにキスをして、身体を組み敷いたら、やる気が出てきてしまった。
これも、ボンゴレの血──ブラッドオブボンゴレ──の為せる技なのだろうか。
自分の身体の下のツナは、見ているだけでどこか身体の中心がぞくっとくるような色気があった。
いや、色気というには語弊がある。
そういう分かりやすいものではない。
どこか目を惹き付けられ、身体の奥底が疼いて、自分でも知らなかった欲情が掻き立てられるような、そんな衝動。
それがツナによって呼び起こされるのだ。
ツナの目、柔らかそうな頬、白くしなやかな身体──それらが目に焼き付いて、甘い痺れと共に全身が熱くなる。
唇を味わえば、そこから凶暴な情欲が引きずり出されるような感覚がする。
容姿に恵まれている上に、マフィアのドンという事で、今まで自分から相手に困った事はなく据え膳を食ってきた形のディーノは、性に対しては淡泊なつもりだった。
が、今、自分の身の裡を襲う情欲は、身体の中を荒れ狂い、自分の身体の下のこの少年を貪りつくしたい、という凶暴な熱情に膨れ上がっている。
───ツナ、だからだ。
それに思い当たって、ディーノは内心舌を巻いた。
きっとボンゴレの血が、それに触れた人間の欲望を解放するのだろう。
それも、セックス、という形で。
「ツナ……」
「あ、……や、…はずかしい…」
名前を呼んで首筋に顔を埋め吸い上げると、微かに身動ぎして恥ずかしそうに声を上げる様子が股間を直撃する。
今まで抱いたどの女にもこんなに興奮した事はない。
この腕の中の少年を貪ってよがらせて啼かせたい……。
(って、オレってこんなに凶暴だったっけ?)
ディーノは内心苦笑した。
きっとそういう欲望を呼び起こさせる何かが、ツナにはあるのだろう。
そうでなくては、こういう行為に慣れているはずの自分が、こんなにがっついて興奮するはずがない。
しかも男相手に。
「ツナ……ほら、気持ちいーだろ…?」
首筋から顔を移して、白い胸についた桃色の乳首に吸い付く。
びくん、と大仰にツナの身体が揺れ、ディーノの金色の髪を引っ張ってきた。
「ふぁ…ッ、ひぁ…あ…あん……ッッ!」
乳首に吸い付いて舌で転がし、小さな乳首に軽く歯を立てる。
そのたびにびくん、とツナの身体が震えて、乳首がぷっくりと勃ちあがってくる。
女の乳房のように柔らかくも盛り上がってもいないが、平板な胸についた小さな乳首は過去のどの乳首よりもディーノを興奮させた。
ちゅっと吸い上げて、片方の乳首には指を這わせくりっとこね上げる。
「あ、っディーノ、さんッ……あ、アン!」
上目遣いにツナを見ると、茶色の髪をぱさぱさと振り乱して、ぎゅっと瞳を瞑った様子が愛らしかった。
ズキン、と股間に来て、むくむくと其処が頭を擡げ、腹に着くほど反り返るのが分かる。
こりゃたまらねぇな、と、ディーノは思った。
なんだか童貞を喪失した時のように余裕が無く、身体の下のツナに早く入りたい、という欲望ばかりが先行する。
「あ、ローションで解すのはオレがやります…リボーンに自分でやれって言われてるから…」
ディーノが本番に移ろうとしているのに気付いて、ツナがはっとして頬を染めながらもそう言ってきた。
「おいおい、リボーンってたまに理解できねえー」
ディーノにそう言われると、自分でも恥ずかしい。
俯いたままツナはローションを手に取ると、蓋を取って掌にピンク色の粘液をとろりと垂らした。
甘く興奮する匂いが、暖められて仄かに立ち上る。
それをツナはこわごわ、自分のアナルへと持っていった。
ひた、と指を押し当てて、眉を顰め、指を恐る恐るアナルへと入れていく。
「痛くねーのか?」
「大丈夫です…って、あ、あっあッッ、ディーノさんっ!」
ディーノの大きな手が突如ツナの可憐なペニスを握ってきたので、ツナは堪えきれずに甘い声を上げた。
「ツナのここ、可愛いなー…色も綺麗だし、……日本人だからか?」
やわやわと握ってやると、そこはむくりと頭を擡げ、桃色に染まって手の中で硬度を増す。
ローションの甘い匂いが立ちこめて、ディーノも更に興奮が増してきた。
ツナから渡されたコンドームの袋をびりっと歯で破いて、素早く自分の猛ったペニスに装着する。
「ほら、そろそろいいだろ、オレももう限界だぜ…」









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