◇懲罰  3   








「ハッッ……あッウ……く……ぁ、ああッッ……い……ッッ」
狭い部屋の中にベッドのぎしぎしという音と、肉のぶつかり合う音。
粘膜同士の擦れ合う淫靡な水音、そこにザンザスの低く掠れた喘ぎが響く。
既に不快感も嘔吐感も全く無く、ザンザスは下半身全てが熱く蕩けてしまうような快感に堅く瞳を閉じ、全身を震わせ行為に没頭していた。
ザンザスのペニスも堅く勃ち上がり、剥きたての果実のように瑞々しい先端は透明な先走りを溢れさせている。
「前も弄ってやれ」
ディーノの声に、ザンザスの脚を押さえていた男の一人が頷き、無造作にザンザスのペニスを掴んで扱き始めた。
「い、あ……ッン……う、うぅ……ッッく……んぐ……ッ!」
脳がぐずぐずと崩れていき、何も考えられなくなる。
自分がどんな辱めを受けているのかという屈辱。
それをディーノと、しかもスクアーロに見られているという事実。
……とは理解しても、突き上げてくる快感に頭は霞み、声が漏れる。
ザンザスは激しく顔を左右に振り、深紅の瞳を茫洋と潤ませて、拘束された手首を動かし、しっとりと汗をかいた滑らかな肢体を悶えさせた。
ザンザスを犯していた男が一際ぐっと腰を突き入れ、内部を抉る。
「う…ッッッ!」
その動きと連動してペニスを強く扱かれ、ザンザスは目の裏に閃光が走った。
背筋を反り返らせ、全身を硬直させ、無意識にアナルを締め付けながら、ペニスの先端から勢い良く白濁を迸らせる。










「はははっ、ザンザスも普通に人の子なんだなー」
ザンザスが射精する様を眺めながら、ディーノは肩を竦めた。
部屋の中に精液特有の匂いが立ちこめ、スクアーロが蒼白な顔を凍り付かせる。
ザンザスにのし掛かっていた男がずるり、とペニスを引き抜いた。
中で存分に射精したらしく、引き抜いても尚巨大なペニスの先端からは精液の残滓が滴る。
「ご苦労。様子はどうだ?」
「悪くねえようですぜ?」
男がディーノに礼をして返事をする。
「そっか。じゃあ、次は上と下両方やってみろ」
「分かりました」
男が交代し、ザンザスの脚を押さえていた男が犯していた男の位置に代わる。
更に手を押さえていた男がディーノの言葉に頷いて、ザンザスの顔を跨いだ。
「跳ね馬!!ま、まさか……っっ」
「まぁ、まだまだ始まったばかりだしな。ザンザスだって飲んだ媚薬が効いていてこんなもんじゃ満足できてねぇはずだぜ?」
「テメェ、待て!もうやめてくれぇ!跳ね馬ぁ……お願いだぁ……」
スクアーロが涙声になった。
先程からぼろぼろと涙を零してはいたが、更に嗚咽が漏れて耐えられない、というように切れ切れに言葉を続ける。
「なんだそんなにいやなのか?ザンザスは気持ち良くなってるんだぜ?お前だってザンザスが気持ち良ければ悪くねえだろ?」
「そ、そんな事あるわけねぇだろうが!テメェ…ッッ!……ディーノ……オレが、オレが代わりになるからっ…ボスはもう、許してやってくれぇ…!」
悲痛な叫びと共にスクアーロはばっと立ち上がった。
スクアーロの背後に立っていたディーノの部下が素早くスクアーロを拘束しようとするが、今度ばかりはスクアーロも大人しくはしていなかった。
背後の男をぎりっと睨み付ける。
剣士としてのオーラを立ち上らせたスクアーロに、屈強な男も無意識に後退る。
そのままスクアーロは素早く着ていた服を脱ぎ始めた。
スクアーロが着ていたのは、ヴァリアーの隊服では勿論無く、白いシャツと黒いボトムのみの質素な服装であった。
下着もろとも脱ぎ捨て全裸になると、暗い部屋の中でも目の覚めるように白く引き締まったしなやかな身体が浮かび上がる。
ディーノがすっと目を細めて、唇を形良く吊り上げた。
「何やってんだ?」
スクアーロはディーノの前に立ちはだかった。
「ボスの代わりにオレが代わりになる!」
「それじゃ駄目だぜ、スクアーロ」
スクアーロの肢体を頭の天辺から脚の爪先までゆっくりと眺め下ろしてディーノが微笑んだ。
「じゃあ、こういうのはどうだ、スクアーロ?お前がザンザスの相手を務めるっていうんだったら、あそこにいる部下達は下がらせてもいいぜ」
「な、なんだとぉ!」
「どうせザンザスはヤられるんだ。身も知らぬ何人もの男にヤられるよりは、お前にヤられた方がまだマシかもしれねぇな」
スクアーロがぎりっと奥歯を噛み締め、流れるような艶やかな銀髪を振り乱してディーノを睨んだ。
しかし、覚悟を決めたように頷いた。
「分かった。じゃあオレがヤるぜぇ。アイツ等は下がらせろ」










射精の快感と背後を犯された悦楽に全身力を抜きぐったりと横たわっていたザンザスにも、そのスクアーロの声が聞こえた。
媚薬で麻痺した脳にもその言葉の意味は理解できた。
瞬時にして悦楽に蕩けていた脳は覚醒し、ザンザスは瞳を見開いた。
自分に跨り今にも赤黒く充血した太いペニスを口に押し込もうとしていた男が、身体の上から退く。
三人の男たちはすっと引き下がり、代わりにザンザスの視界に、見慣れたシルエットが逆光となって浮かんだ。
輪郭が銀色にきらきらと光り、しなやかな身体のラインが鉄格子の嵌った窓を背にして自分の目に映る。
全身がさっと冷えて、ザンザスはごくりと唾を飲み込んだ。
「……よせ……」
いかに覚悟を決めたザンザスであろうとも。
スクアーロと………。
───それだけは、耐えきれなかった。
「やめろ、カス……」
「ザンザス……」
ザンザスにのし掛かろうとしていたスクアーロがザンザスの拒絶の声を聞いてはっと身体を止める。
「スクアーロ、ヤれよ」
「ボ、ボスが……」
「お前がザンザスをヤるんだったらっていう条件でオレは命令を変えたんだ。ザンザス、お前もオレに従ってもらう。お前に選択権はねぇんだぜ。分かってんだろ、ザンザス」
「ボス……すまねぇ…。ボスはもしかして、オレよりまだアイツらにヤられた方がマシだったのかぁ?」
ぎしり、とベッドを軋ませてスクアーロが上がってきた。
申し訳なさそうに頭を垂れれば、ザンザスの肌にさらさらとした銀糸の長い髪が降りかかる。
ザンザスは、先程男たちによって大きく開かされた足を閉じようとした。
が、薬の所為だろう、全く力が入らずやすやすとスクアーロの侵入を許してしまう。
スクアーロのしなやかなひんやりとした指が自分のペニスを握ってくるのを、ザンザスは信じられないものを見るとでも言うように目を見開いて呆然と見下ろした。
自分の部下に犯されるなど、到底我慢できない。
自分の部下だからこそ、耐えられない。
これならまだ、ディーノの部下たち何人もに輪姦された方がマシだ。
「カス、退け……!」
掠れた声を振り絞るが、スクアーロは思い詰めたような表情をしてザンザスを見つめてくるだけだった。
「ボス、ボスをこれ以上アイツ等の好きにはさせねぇ。オレがボスを抱く…。ボスは目ぇ瞑ってただ足開いてりゃあいい…」
いかにも行為に慣れているようなその口調が、ザンザスを怖じ気づかせた。
自分が眠っていた八年間の間に、スクアーロはそれだけの年月を起きて過ごしていたわけだ。
その間にスクアーロがどんな経験をし、どのように生きていたのか、考えてみると何も知らなかった。
目が覚めてからというもの、リング戦の事や自分の事に掛かりきりで、部下の個人的な事にまでは全く思いが至っていなかった事に、今更ながらに気が付いて、ザンザスは愕然とした。
スクアーロが急に見知らぬ男のように思えた。
純粋な恐怖が心の奥底から湧き上がってきてザンザスは息を詰めた。
大きく足を開かされ、その太股をスクアーロがぐっと掴んで持ち上げてくる。
先程ディーノの部下に蹂躙され、熱を持ってひくつく後孔に、ひたり、とひんやりとした、しかし堅い肉棒が押し当てられたのを感じて、ザンザスは戦慄した。

「よせ……よ、う……うぅッ……ぁ、ああぁ─ッッッ!!」










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