◇Vita Rosa(ヴィータローザ) 14 








咥えたそれは堅く張り詰めていて、歯を立てると歯を押し返すほどに弾力があり、ツナはすっかり夢中になった。
クチュクチュと水音を立てて先端を食み、舌を巡らせて丸い頭をつるりと舐る。
了平の引き締まった腹筋がぐぐっと盛り上がって臍がひくひくと動き、脚にぐっと力が篭もるのが分かる。
「お……沢田!こ、これは……我慢しろという事なのか?」
了平の上擦った声にツナは濡れた眸を上げた。
まだ自分の中に挿れていない段階でいかれては困る。
「あ、そう、そうですお兄さん。オレがいいっていうまでは我慢するっていう修行ですからね、よろしく」
(なーんて、ひどいよね…)
とは思ったが、口の中で出されてしまったのでは元も子もない。
「そ、そうか…うむ、了解だ!」
何の疑問も持っていないのだろうか。
了平の自分を信じ切っているような声に少し苦笑が漏れる。
それにしても、自分もすっかり身体が熱くなっている事に、ツナは内心驚いていた。
(オレってもしかして………)
シャマルとかディーノさんとかともけっこうすぐにやっちゃったし。
お兄さんともはっきり言って抵抗ないし。
(オレって……)
あーだめだ、考えちゃ。
うん、これはリボーンの指令なんだから、いいんだ!
ぶんぶんと頭を振って、頭の中から理性を追い出す。
(…と、ローションローション)
ベッドサイドに置いておいたローションを手に取り、蓋を開けて右手にとろりと透明な桃色の液体を垂らす。
ぬるぬるになっている指を自分のアナルに押し当ててローションをたっぷりと馴染ませるようにして指を1本挿入してみる。
(ン……な、んかすっごくやらしいな、オレって……)
自分が一体どんな事をしているのか、真面目に考えると恥ずかしくてたまらなくなり、その恥ずかしくてたまらない気持ちが更に自分の身体に火を点ける。
こんな恥ずかしい事を平気でできるような自分になってしまった。
いや、なってしまったのではなく、元々自分はこういうのが好きなんじゃないのか?
セックスが好き、男が好き、やられるのが好き。
(…まさか……)
そんなはずはない。
とりあえずやんなきゃならないことだから、仕方が無くやってるんだ。
指はやすやすと1本入り込み、ツナはもう1本を挿入してみた。
「んん……!」
全く痛くない。
痛くないどころか、中に入れた指の中途半端な快感に焦れったくなって、ツナは腰を揺らした。
先日のディーノとの情事を身体が思い出す。
ディーノの硬くて太く熱いものを体内深く受け入れて思う様に掻き回され、死んでしまいそうな程気持ち良かった事。
思い出すと下腹部がずきんと疼いて、ペニスがぴんと勃ち上がる。
息が荒くなってツナははぁはぁと息をしながら了平を見つめた。
ベッドの上で仰向けになってじっと大人しくしている了平の股間を舐めるように見る。
すっかり勃ち上がったペニスを見て、無意識にごくりと喉を鳴らす。
――欲しい。
そう思った。
今まではゴム越しのそれを、今回からは直に味わえる。
そう思うとますます欲望が高まる。
目が釘付けになったまま、ツナはそろりと了平に近寄り、腰を跨いだ。
自分がどんなにあられもない格好で、しかも恥ずかしい事をしているか。
普段の自分とかけ離れているか。
……そんな事は既に考える余裕もない。
薄茶色の瞳を潤ませ、了平のペニスを見下ろすと、ツナはアナルから指をぐっと引き抜き、濡れて解れた入口をペニスの所に持っていった。
硬い肉棒を右手で掴んでローションをそちらにも馴染ませ、それから解れた入口に押し当てる。
「お……」
「お兄さん、ちょっと我慢してね?まだだよ…」
上擦った声でそう言うと、ツナはゆっくりと腰を下ろしていった。
「う……あ、ああ…んん…」
柔らかい入口を十分に解したおかげで痛みは殆ど無かった。
ゆっくりと自分のペースで腰を落としていけば少しずつ入口が広がり、熱い体内に了平の肉棒がぐっと押し入ってくる。
「う……」
守護者と直接繋がったからだろうか。
それともゴムがなくて生だからだろうか。
そこは焼け付くように熱く、今までにない戦慄がツナの身体を走り抜けた。
……気持ちが良い。
気持ちが良いだけではなく、脳が沸騰してどうにかなりそうだ。
たまらなくなってぐっと腰を下ろし、一気にペニスを咥えこむ。
「おおお!うぉ…っ」
「お兄さん、も、大丈夫、我慢しなくて、いいからっ…」
自分も我慢できそうになかった。
腰がすっかり蕩けてぐちゃぐちゃになって、繋がった部分がバターのように溶けていく。
今までにない感覚だった。
「う……ンン……」
堪えきれずに了平の引き締まった腹に両手をつくと、ツナは唇を噛み締め、目を閉じて腰を激しく上下に動かし始めた。
ぐちゅっと湿った音を立ててペニスを引き抜いたかと思うと、ぐっと腰を入れて深く飲み込み、腰を回して自分の感じる部分に了平の切っ先が当たるようにする。
ズキンと全身を貫く快感に堪えようもなく、ツナはぱさぱさと柔らかな茶色の髪を振り乱して喘いだ。
「あ、…い、や、ぁ……ン…うぁン……ああ…ッッん…」
もはや自分が何を言っているのか分からない。
身体全部が快感の虜になり、全身が性器になったように燃え上がる。
「お……も、これは無理だぞっ!我慢できん!」
「ん、い、いいよぉ、お兄さんっ、我慢しなくて、いいから!」
「そ、そうか!すまん!」
了平自身、自分が何を言っているのか既に分からないのだろう。
男らしい眉を顰め、ツナの動きに合わせて腰を動かし、ズッ、と深く突き入れてくる。
「あぁん!!」
深く突き入れられて、目の前に火花が散る。
思わず甘い喘ぎを上げると、その声に触発されたのか、体内の了平の怒張がぐっと膨れ上がり、次の瞬間、熱湯のように熱い精液がツナの体内に射精された。
「あ、あ、あーっっ!」
目の前がオレンジ色になる。
身体全身がかっとなって、炎が燃え上がる。
それはオレンジ色の死ぬ気の炎だった。
一瞬の炎に焼かれ、ツナは自分も勢い良く了平の腹の上に射精していた。










「お、結構早かったじゃねーか」
パオパオ師匠の仮装を解き、ツナの部屋で契約書を見ていたリボーンは、晴れの守護者のサインの上に死ぬ気の炎がぽっと灯ったのを見てにやりと笑った。
「もっとかかるかと思ったんだがな。ツナって意外にもオレの想像以上って事か」
なんだかんだ言って、ツナの潜在能力は侮る事ができない。
リボーンはしみじみそう思ったのであった。










一方ツナは。
射精して事が成就すると、すみやかに理性が戻ってきた。
自分のしていた事がたとえようもなく恥ずかしくなって、こそこそと後始末をして服を着込み、
「お兄さん、修行おわりでーす…」
「お、そうなのか?」
と、首を傾げる了平をせき立てるようにしてラブホテルから出る。
リボーンが迎えの車を寄越してくれていたのでそれに乗って帰り、恥ずかしくてそのまま誰とも顔を合わせずにその日は寝てしまった。
「はーああ…」
夜になって起きると、自分の机の上に契約書が乗っていた。
晴れの守護者の上に、黄色い炎が灯っている。
晴れの守護者の炎の色だ。
(へー……、こういう風になるのか…ふーん……)
ちょっと興味深く、ツナはしみじみと契約書を眺めた。
身体はすっきりとして心地良く、なんとなく昨日とは違った感じもする。
いつもより、そう、エネルギーが充填されたというか、パワーが上がった気がする。
(これも守護者との契約の効果なのかな…うーん、よくわかんないし、いいか…)
「はぁ…」
もう、でも、とにかくお兄さんには修行って事でごまかせたからいいけど、他の人どうすんだろう?
思わず頭を抱えてベッドに横になっているとリボーンが入ってきた。、
「ちゃおっす」
「あ、リ、リボーン」
「よくやったな、ツナ。お前結構才能あるんだな」
「や、やめてよ、そんな事言うの、恥ずかしくて死にそう」
「ま、そう言うな。お前がこんなに上手にできるとは思わなかったぞ。こっちの方がオレの修行なんかいりそうにないな」
「またそういう事ばっかり言って…」
「で、次だ」
「え、も、もう?」
「いや、また一週間後だな。次は誰がいいか、ちょっと悩むな」
と、リボーンが言うのを聞いて、ツナははぁ、と溜息を吐いた。
恥ずかしくてたまらないのに、次は誰だろうと心の何処かでわくわくしている自分がいる。
――あぁやだ。
オレってもしかして、本当にこういうの好きになっちゃったのかもしれないよ、ああどうしよう……。
その日はそんな風に悶々と考えて、ツナはよく眠れなかった。










次の一週間、普通に学校生活を送っていると、やっと普段の自分が取り戻せたような気がした。
了平と顔を合わせるのはさすがに恥ずかしかったが、了平自身は修行の一環だとすっかり思いこんでいて全く屈託がない。
「お、沢田、この間は修行付き合ってくれて感謝だ!」
「あ、そ、そうですか…」
「ところであの修行は続きはないのか?」
「…えっ!」
にこにこと了平に言われてツナは口籠もった。
「あれはなんか一回きりだそうです、すいません…」
「そうか、ちょっと残念だな、うむ…」
いかにも残念そうにしているところが了平らしい。
「はー……」
「お、なんか修行とかしたのか?」
「え、い、いやなんでもないよ山本。じゃ、お兄さん、また」
「おう、またな!」
(よかった、お兄さんがバカで…ってバカって言ったらひどいか…あーでもよかったぁ…)
ツナはほっと胸をなで下ろしたのだった。









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