◇懲罰-2-  3 








ちょうどその頃だった。
ディーノが会いに来たのは。



「よぉ、調子どうだ?うまくやってる?」
それまで外部にも、或いはボンゴレの内部でも中枢部を除いて秘密だったヴァリアーの拠点を、他ファミリーの人間が訪れるのは初めてである。
ヴァリアーの幹部達──特にスクアーロが視線を鋭くしてディーノを睨む。
全員が、外部の人間であるディーノに対して表面上は丁重であるものの、警戒していた。
勿論ディーノは勝者であり、ザンザスやスクアーロを救った人物である。
だからこそ、こうしてヴァリアーの城の場所を知る事ができ、訪れる権利もある。
そうとは分かっていても、暗殺部隊として密かに活動する場に、他ファミリーのボスが来るなど──決して許容できるものではなかった。
幹部達は皆…救ってもらったスクアーロでさえ、ディーノを慇懃無礼に迎えた。
しかし。
……ザンザスは反対に、ディーノを見て、倒れ込んでしまいそうなほど安堵した。
もう、肉体も、精神も限界に近づいていた。
ディーノの来訪があと数日遅かったら、ザンザスは、自分が制御できたかどうか心許なかった。
もしかしたら、身の裡を焼き尽くし理性まで席巻する情欲に負けて、もう誰でもいい、やぶれかぶれに部下の誰かを襲っていたかも知れない。
そうしたらザンザスをそれまで支えていた矜持やプライドなど全て崩れ、ヴァリアーのボスとしても君臨などできなくなっていたはずだ。
しかし、そのぎりぎり限界直前の所でディーノがやってきた。
内密な話がある、というような振りをしてディーノを自室に迎え入れると、ザンザスは物も言わずにディーノに迫った。
もう体裁など繕っても居られなかった。
「おい、ザンザス……どうしたんだ?」
初めは驚いていたディーノも、ザンザスが全身に纏う情欲の炎に気付いたのだろう。
唇を歪めて苦笑しながら、ザンザスを寝台に押し倒してきた。
押し倒されただけで背筋が戦き、甘い疼きが脚の爪先から髪の毛一本に至るまで浸み透る。
「ハッ、ァ……デーノ……っ、早く、来い…ッ」
「なんだ、スクアーロにやってもらってねーのか?」
「煩ぇ……ドカスの事なんざ、どうでもいい…ッ!」
ディーノにスクアーロの事を言われると、羞恥と屈辱で身が焼けるようだった。
スクアーロに相手をして貰えないから飢えているというのを看破されて、身が細るほど恥ずかしかった。
が、その耐え難い羞恥心がまた反対に欲情を煽り立ててきて、ザンザスは堪えきれずに自分から服を脱いだ。
荒々しく着衣を脱ぎ捨てて全裸になり、引き締まった太腿を左右に大きく開き、奥まった部分を晒し、ひくつく後孔を剥き出しにする。
ベッドヘットから戦慄く手でローションを取り出すと、栓を取るのももどかしく粘性のある液体を股間にしとどにかけ、自ら濡らしてあられもなく誘う。
どんな淫乱な格好でもできると思った。
ディーノがやる気になってくれさえすればそれでいい。
とにかく、ぶち込んで欲しかった。
身体の中を、堅く熱いモノで貫いて欲しかった。
えぐって欲しかった。
深く穿って、自分をめちゃくちゃにして欲しかった。
心も身体も、めちゃくちゃに蕩けるほどに。
してくれればなんでもするとさえ思った。
「スクアーロのヤツ、折角オレがお前の事抱けるようにしてやったのに、てんで勇気がねーんだな」
そんなザンザスの痴態に呆れたのか、ディーノが端正な顔を歪めて苦笑した。
「煩ぇ…クソが…ハッ…く、ッ…はやく…」
「まー、そう言うなよ。お前だって本当はアイツに抱かれてーんだろ?可哀想になー。こんな淫乱な身体をしてるのに、スクアーロに抱いてもらえねーなんて」
ディーノのあてつけのような言葉に腸が煮えくりかえる。
が、事実その通りだった。
淫乱な身体……確かに、反論できない。
なぜこんな身体に…と呪わしく思うが、そんな事もディーノの肉体を前にしてはもはやどうでもよくなった。
今はただ、目の前の身体を貪って、全てを忘れ悦楽に浸りたかった。
「しょうがねーな、可愛がってやるよ」
ディーノが覆い被さってきた。
右腕を無造作に伸ばし、ザンザスの腹筋の美しくついた引き締まった腹をまさぐる。
それからゆっくりと、開いた脚の中心、奧まったひそやかな蕾へと指を進める。
「く……ぁ、うくッッッ!」
ディーノの指がアナルの周囲の襞を撫でる。
つぷり、と襞に挿入される、待ちかねた刺激に全身が歓喜した。
表現しようのない、とろとろの快楽が、脳内をあっと言う間に性欲一色に塗り替える。
「すげぇがっついてんじゃねぇかザンザス……可哀想になー」
揶揄われても、反応する事もできなかった。
それよりも肉欲に脳が支配された。
指が内部へと押し入って、ナカを掻き回してくる。
顎が上がり、目の前が霞む。
無意識に足を限界まで広げ、ディーノに強請るように腰を突き出しているのにも、もはや羞恥の気持ちも湧かない。
もっと──……もっと、欲しい。
ナカをもっと掻き回してほしい。
もっと右を……左を。
感じる所を思いきり引っ掻いて欲しい。
ディーノの指が感じる部分を掠めるたびに、びくびくと身体が痙攣する。
指を追って腰をくねらせると、それをからかうように、故意だろう、指がするっと引き抜かれる。
中途半端な快感に飢餓感が更に増し、ザンザスは唇を噛み締めて深紅の虹彩を眇めディーノを睨んだ。
「はは、そう怒るなって、ほら、欲しいもんやるからさ」
アナルに、熱く硬い砲身が押し当てられる。
全身が期待に粟立つ。
ディーノの硬く漲った陰茎がずぶり、と入ってきた瞬間は、声も出なかった。
枯れきった広大な砂漠に、突如スコールが降ったようだった。
背中を弓のように撓らせ、白目を剥いて悶絶すると、ディーノが苦笑した。
「そんなに欲しかったのか……?悪かったな、知らなくて…ほら、擦ってやるよ、ザンザス」
「あ、あっあッ、うぅーっ、くっッ!!」
ディーノが腰をぐっと回してきた。
濡れた腸内の粘膜をめくりあげるようにしてペニスが引き抜かれ、ズブっと勢い良く埋め込まれる。
前立腺を内部から擦られて、神経が焼き切れる。
目の前にパッパッと目映い閃光が散る。
息が吐けず、肺に酸素が取り込めなくてふっと意識が薄れる。
視界がきらきらと輝いて、得も言われぬ快感だった。
「ちゃんと息しろって…」
動きを一旦止め、ディーノがザンザスを揺さぶる。
失い掛けていた意識が戻って、ザンザスはひゅうっと喉を鳴らして息を吸った。
全身が汗まみれだった。
下半身の感覚が全身に伝播し、がくがくと震える。
開き続けた目の端が引きつって痛む。
涙が溢れて視界が歪む。
ディーノの金髪が滲む。
覆い被さってくる身体と、突き入ってくる楔の厚さに、身体の芯からとけて全身が溶けたバターのようにとろりとなっていく。
「うぁッ……ぐ、っふ…あ……ンくっ……あぁっぁうッッ………あぁぁぁああッ!」
堪えきれずに咆哮した。
身体を潰すかの圧力で上からのし掛かられ、肺が圧迫され息が継げない。
深く深く射精されて、ザンザスは全身を貫く快感とともに自分も胴震いしながら射精した。








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