◇Moral Hazard  2








シャワーを浴びてすっきりすると長旅のせいもあってすぐに眠くなった。
「寝るかぁ?」
「あー、眠くなっちまった。スクアーロ、明日、剣の稽古よろしくな?」
「あ゛ぁ」
と言うスクアーロの声を聞きつつ、眠い目を擦ってベッドへ潜り込む。
中央にはザンザスが眠っているらしく、ふんわりとかけられた毛布から黒髪が少しだけはみだしていたが、それ以外は全て毛布に覆われていて、山本からは見えなかった。
まぁ、他人の寝ているベッドに潜り込むとか、ちょっと普通では考えられないシチュエーションではあるが、宿泊学習で雑魚寝しているイメージで考えればいいのかもしれない。
見えない事とザンザスがすっかり眠っているらしい事に安心して、山本はベッドの端にもぞもぞと潜り込んで身体を横たえた。
「じゃー、おやすみ」
「ん゛ん゛」
スクアーロがザンザスを挟んで向こう側に入ったらしい。
ベッドが広いので3人寝ても十分に手足が伸ばせる。
しかもスプリングの効いた上質のベッドだ。
山本はすみやかに眠りへと入っていった。










―――しかし。
夜半過ぎ。
深く眠り込んだはずの山本は、不意に目が覚めた。
腰の辺りがざわざわする。
何かがそこに当たってその部分を刺激している。
眠い目を擦りながら起きて、身体を少し動かすと、その当たっているものも動いた。
(………?)
不審に思ってはっきりと目が覚める。
なんだろうと思って顔を向けると、
「……XANXUS…?」
それはザンザスだった。
起きているのだろう、山本に顔を向けている。
深紅の双眸が暗闇でひっそりと光る。
紅く光る瞳が猛獣のようで、山本は一瞬びくっとした。
狼狽する気持ちを押し隠すようにへらっと笑って見せる。
「あ、あの…ザンザスさん…その、オレ、邪魔ですか?スクアーロにここで寝ていいって言われたんすけど、邪魔ならどきますから…」
山本はザンザスと直接話した事は数える程しかない。
なので、こんな場合どういうリアクションを取ったらいいのか、分からなかった。
普通に考えれば、どう考えてもザンザスが怒る場面だろう。
何しろ、自分の恋人であるスクアーロの所で気持ち良く寝ていたのに、そこに関係のない男が入って一緒に寝ていたわけだ。
言語道断とも言えるかも知れない。
そう思うと、山本はかなり焦った。
ザンザスの力を恐れているわけではなかったが、自分がかなり失礼な振る舞いをしたという認識があるだけに、何かされてもしょうがない、という気持ちにもなる。
しかし、ここでザンザスが怒って炎を出したりしたら困る。
スクアーロを起こしてなんとかしなければ…。
そう思ったが、双眸に射られて動けない。
ザンザスが深紅を細めて低く掠れた声で囁いてきた。
「……刀小僧か…。おおかた、スクアーロのヤツがここで寝ていいとか言ったんだろうな…」
「あ、はい.そうなんすけど。…でも邪魔してたら申し訳ないっす…」
山本の返答を聞いて、ザンザスが唇端を歪めて笑った。
「…別に、構わねぇ…ドカスの野郎がアホだとは思うがな…」
「……アホなんですか、スクアーロが?」
「あぁ…いや、もしかしたら分かっていてそうしたのか…」
「……え?」
ザンザスの言っている意味が分からなくて、眉を寄せて問い掛ける。
ザンザスがふっと笑った。
「こういう事だぜ…」
不意に引き寄せられ、山本はザンザスの腕に抱き締められた。
呆気にとられていると、ザンザスの厚めの唇が山本のそれに吸い付いてきた。
蛭のようにすっぽりと吸い付かれ、熱い舌がぬるりと咥内に入り込んでくる。
山本は驚きで動けなかった。
ザンザスにされるがままに口付けを受ける。
ザンザスの分厚い舌が縦横無尽に咥内を這い回り、顎裏の粘膜を擦ってくる。
山本の舌を捕らえるとねっとりと絡みついて引っ張ってくる。
「……っ…」
男からそんなキスを受けるのも、このように密着して接触するのも、山本は初めてだった。
女性となら数人付き合った事があるが、その時は自分が相手にキスをしたり触れたりする立場で、それも至極あっさりしたものだった。
勿論相手からこのようにされた事はない。
驚いたままの表情でザンザスを見上げると、ザンザスが深紅の目を細めてにやりと笑った。
唇を離したかと思うと、今度はザンザスの太い指が山本の股間をぐりっと握りしめてくる。
「結構、悪くねぇな…」
「…っ、ザ、ンザスさんっ、冗談はっ…!」
「冗談なんかオレが言うわけねぇだろうが…。ドカス以外の男を食いてぇと思っていた所だったんだ、テメェ、飛んで火にいる夏の虫だぜ…」
「…え?あ、それは…」
「大人しくしてろ。…いいな?」
射貫くような鋭い赤い眼に見つめられると、山本は動けなくなった。
どうしよう…。
頭の中で狼狽しながら考える。
考えるのだが、具体的にどうこう、という行動が思い浮かばない。
呆けていると、対するザンザスはきびきびと動いてきた。
山本の身体の上に乗り上げ、着ていたバスローブを脱いで全裸を晒す。
山本の穿いているズボンをずり下げて、中から無造作にペニスを取り出して上体を屈める。
何か飴でもしゃぶるかのようにペニスを口に咥えて吸い上げてくる。
「……うっ……!」
ザンザスがそんな事を…。
スクアーロから話は聞いて、彼らの関係や情事についてもある程度知識はあった。
が、実際見るのは初めてだったし、勿論こういうふうにされるのなど初めても初めて、想像もしていなかった。
だいだい、自分の反対側にはスクアーロが寝ているのだ。
どう考えてもこれはスクアーロの役目だろう。
自分じゃない。
そう思うと焦りにも似た狼狽感が襲ってきて、山本は手を伸ばしてスクアーロを探った。
上手い具合にスクアーロの長い髪に手が触れる。
それを必死で引っ張る。
「んぁ……?」
スクアーロが寝ぼけた声を上げた。
「スクアーロッ、起きてよっ、スクアーロ!」
顔を横に向けて必死で彼の名前を呼ぶ。
山本のペニスを舐めていたザンザスが顔を上げて、面白そうに山本を見てきた。
肩を竦めて笑うと、再び山本のペニスを舐めに掛かる。
裏筋に歯を立てられ、先端をぬるりと舌でなめ回されて、そんな経験のない山本はあっという間に絶頂に達しそうになった。
必死で奥歯を噛み締めて堪える。
「……んぁ…やまもと…?」
スクアーロが寝ぼけ眼を開いて山本の方を見てきた。
「起きてよスクアーロ!」
「……なんだぁ?」
「なんだじゃなねーって。な、これ、これっなんとかしてくれよ…っ!」









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