「あ゛ぁー?」
まだ寝ぼけているらしい。
スクアーロが引っ張られて頭皮が痛いのか、不機嫌な顔で山本を見てきた。
「ほら、これこれっ、もう、オレどうしたらいいのかっ!」
対する山本は必死である。
このままでは、程なくして自分は射精してしまう。
こんな所で射精してしまうなんて、どうしたらいいのか分からない。
しかも今自分を口に含んでいる相手は、ボンゴレ内外で恐れられている暗殺部隊ヴァリアーのボスで、実子ではないながらも9代目の息子として勇名を馳せているザンザスなのだ。
その炎の威力は知られているし、性格の冷酷さや傍若無人ぶりもよく知られている。
何より山本は、リング争奪戦でザンザスの怖さを直接見ているから、今のこの事態にどう対処して良いのか、本当に分からなかった。
けれど、ザンザスの口淫は巧みだった。
この、尊大な年上の男性のどこにそんな繊細なテクニックが隠されいたのか、と思うほど丁寧で自分の感じる部分を的確に刺激してくる。
経験の無い自分など、あっという間に陥落してしまうのは時間の問題だった。
「スクアーロー!」
堪えきれず大声で叫ぶと、漸く意識がはっきりしたのか、スクアーロが上体を起こした。
「あ゛ー…ボスさん…」
泣きそうな山本と、その股間に顔を埋めているザンザスを見て、スクアーロが呆れたような声を上げる。
「こりゃ、もうダメだなぁ。山本、あきらめてくれぇ。ボスさんやる気満々だぁ…」
「ええっ!そりゃ困るってっ。オレ、こんな、…あ、あっあっっっ!!」
その時、ザンザスが山本の肉棒を強く吸い上げて、同時に鈴口にがり、と歯を立ててきた。
絶妙な刺激に、山本が耐えられるわけがなかった。
情けない悲鳴を上げて、ぎゅっと目を瞑る。
一瞬全身が強張り、次の瞬間、温かな口腔内粘膜に包まれたペニスの先から、ぴゅうっと白濁がほとばしり出た。
ごくり、と喉を鳴らしてザンザスがそれを飲み干していく。
大きな喉仏が上下し、如何にも美味い酒でも飲んでいるかのように飲み下していくザンザスに、山本は半分呆けた視線を送った。
………なんだか、もう、よく分からなくなってしまった。
こんな事をされて、どう考えても、非常識だ。
いや、非常識と言えば、元々、自分が恋人達のベッドに侵入した所からして、非常識だったのかも知れない。
なんで、そんな事してしまったんだろう。
どう考えても、誘われても、断るべき場面なのに。
…もしかして、自分もちょっと、こういう展開を、期待していたんだろうか。
いや、まさか…。
男と、しかもザンザスとこういう事をするなんて、絶対、予想もしていなかった。
……けれど、ザンザスとスクアーロが恋人と聞いて、二人がどういう風に触れ合うのか、興味がなかったとは言えない。
…もしかして、二人がむつみ合う所を見られるかもしれない、とか、そういう変態じみた興味を保っていたのではないか。
まさか……。
でも、そうかもしれない。
(あー、オレって……もしかして、オレも変態…?)
「どうした、山本ぉ…気持ち良かっただろぉ?ボスさんのフェラは絶品だからなぁ?」
スクアーロがへらへらっと言ってきた。
この危機感のなさはなんだ…。
山本は頭痛がしてきた。
この二人は元々こういう関係なのかもしれない。
関係というよりは、モラル的に逸脱しているというか…。
少なくとも、自分のモラルとはかけ離れている。
(スクアーロ、普段はすげーいいヤツなのになぁ…)
なんか、頭が混乱してきた。
ザンザスが顔を上げて、白濁に零れた唇をぐいっと節くれ立った大きな手でぬぐった。
深紅の視線を鋭くして、山本を見上げてにやりと笑う。
「悪くなかったぜ、山本。テメェ、見た目よりセックス好きそうだな?」
「えっ!そ、そんな事無いっすよ!ってか、オレ、もう、その…あ、やっぱりベッドじゃなくて、ソファで寝ますっ。あっちの部屋に移動しますね?」
「ゔお゙ぉい、山本、行かせねぇぞぉ?」
「な、なんで?!」
ずりずりと後退ってベッドから降りようとした所をスクアーロががしっと腕を掴んできた。
ザンザスに止められるならともなく、スクアーロが引き留めてきたので、山本は驚いた。
自分の恋人が、他の男とこんな事をやっていても、いいのか?
常識的に考えたら、スクアーロに殺されてもおかしくないぐらいの場面だと思うのだが…。
「スクアーロ…?」
「ドカス、山本が逃げようとしやがるからな。手でも押さえつけてろ」
「ボスさん、了解だぁ…」
「え、スクアーロ、な、なんだよって、おい!」
「まぁ、山本ぉ、そうびっくりするなぁ。ボスさん、すげーいいぞぉ?せっかくだから、ヴァリアー来た記念にボスさん抱いていけぇ」
「ええー!ちょっと待ったlぁ!ザンザスはスクアーロの恋人だろ!それなのに、それって、なんで?!」
「ん゛ん゛ー?」
スクアーロが山本の両腕を掴んで背中で後ろ手に拘束してきた。
狼狽しながらも問い掛けると、スクアーロが銀色の長い髪を揺らして首を傾げて笑った。
「ボスさんが気持ちよさそうにしてんの見るの楽しいしなぁ?山本もきっと楽しいぞぉ?オレも楽しいし」
「そ、それって変だってば!」
「まぁいいじゃねぇか、山本。うるせー事はなしだ…」
凄みを利かせたザンザスに言われて、山本はうっと押し黙った。
ザンザスが威嚇してくるとものすごく迫力があって、はっきり言って怖い。
こんなザンザスに対抗できるのは、ハイパーなツナぐらいなものだろう。
自分じゃ到底敵わない。
蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。
ザンザスが舌なめずりしながら、口角をあげてにやりと笑った。
「よし、ドカス、そのまま腕掴んでろよ」
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