◆茨の冠◆ 14
先程虎徹に言った通り、バーナビーはヒーローとしてデビューしてからは誰とも性交渉を持っていなかった。
自宅で一人で処理をすることはあっても、以前のようにその手のスポットに行って相手を探すという事はしていない。
ヒーローになって精神的に余裕が無く、物理的にも忙しかったというのもある。
それがここにきて性的には理想的な相手で、しかも性交渉しても全く外部に秘密が漏れるような心配のない相手を見つけたということで、バーナビーの興奮は高まっていた。
ずっとセックスをしていなかったから、というのもあるだろう。
意識すると、股間が既に重く疼いているのに気が付く。
これは、純粋にセックスへの期待だろう。
仕事上の相棒である相手とこんな関係を持っても大丈夫なのだろうか、という一抹の不安はある。
更には虎徹にどう思われているのだろうか、という懸念も無いことはない。
が、元々の出会いからして既に自分の性嗜好をカミングアウトしてしまっている。
そう考えれば、今更細かい体裁など気にするような間柄でもないだろう、とは思った。
バスルームの扉がカチャリと開いて、虎徹が部屋に戻ってきた。
備え付けのバスローブを羽織っている。
髪は洗って乾かしてきたのだろうか、先程までのきっちりとセットされ後に流した髪型ではなく、前髪が自然に下がってさらりとした姿だった。
それは、いつも見慣れている姿よりもずっと若く見えた。
前髪の間から覗く琥珀色の瞳が、じっと自分を見つめてくる。
(……………)
急に心臓がどきどきと鼓動を刻んで、バーナビーは自分がいかにこの行為を欲していたか、それを思い知らされたような気がした。
目の前の虎徹の身体を見る。
着替え時に幾度か見てはいたが、これからこの身体に抱かれるのだという意識を持って見ると、それはダイレクトにバーナビーの興奮を煽ってきた。
引き締まって筋の浮き出た首筋やバスローブの合わせから覗く鎖骨。
逞しい上半身に、細くスタイルの素晴らしい下半身。
そういうものが目に入る度に、身体の中がじいん、と熱くなってくる。
虎徹が押し黙ったまま、バーナビーに近付いてきた。
腰掛けていたベッドから立ち上がって、バーナビーは自分からも近付いた。
虎徹の腰に手を回して、顔を近づける。
虎徹はバーナビーより僅かに背が低かった。
体格的にも腰から下は自分の方が骨格もしっかりとしているし筋肉も付いているだろう。
しかし、その身体が素晴らしかった記憶は十分に残っていた。
顔を近づけると、間近に琥珀色の瞳がじっと自分を見つめてきた。
何か言おうかと思ったが、ここまできて何を言ってもそらぞらしいし、一夜の相手でもあるまいしリップサービスも必要無いだろう。
バーナビーは肩を竦めて小さく笑いながら、虎徹の唇に自分の唇を重ねた。
虎徹がぴくっと肩を揺らす。
しかし抵抗もせず逃げようともしないので、バーナビーはそのまま唇を押し当てた。
弾力のある暖かな感触が直に伝わる。
押し当てて舌を伸ばし、虎徹の唇の輪郭を舌先でなぞる。
唾液で濡らし、それから歯列を割って咥内へと差し込む。
自分よりも熱い咥内に、ぞくぞくと鳥肌が立った。
ぬるりとした粘膜同士の触れ合いが、そのまま脳細胞を刺激してくる。
アドレナリンが一気に放出されるのを感じて、身体がかぁっと熱くなった。
震えが来て、バーナビーは貪るように虎徹の咥内に舌を這い回らせた。
そうしながら、虎徹をベッドに腰掛けさせ、自分は膝立ちになって虎徹の脚の間に入る。
「…バニー…?」
訝しげな声を無視して、虎徹のバスローブの腰紐を解く。
微かな衣擦れの音がしてバスローブが開けば、間から引き締まった浅黒い美しい裸体が現れた。
やはり何度見ても理想的な身体だ。
理想的というのは、ヒーローとして俊敏に活動ができるような理想的な筋肉の付き方と体格であるという事だ。
特に虎徹は上半身、腕を使う攻撃が多いし、身軽に身体を動かすのが特技だ。
それに最適な身体だ。
同時に、バーナビーの興奮を誘う身体としても、虎徹の身体は最高だった。
思わず手を伸ばして、引き締まった硬い脇腹をまさぐる。
びくっと虎徹が身体を震わせ、眉を寄せる。
そういう仕草にさえ、たまらなく興奮させられる。
下腹部の中心は、前に見たのと同じ艶々とした陰毛が茂り、その真ん中で濃い色をした形の良いペニスが下を向いて垂れ下がっている。
バーナビーはそれを右手で掴むと顔を近づけ、おもむろに咥内に飲み込んだ。
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