◆茨の冠◆ 18








その後バーナビーは定期的に虎徹と関係を持つようになった。
感覚としては数日、或いは一週間。
次の日が会社の休みの日など、帰りがけ一緒に街中のレストランで外食をして、だいたいバーナビーのマンションへ帰ってくる。
そこでまた酒などを飲んで一緒にテレビを見たり音楽を聴いたり、或いは取り留めもない話などをして過ごし、そしてベッドに移動してセックスをする。
一種規則正しい性生活に、バーナビーは今までに無く身体が満たされて満足した。
虎徹はセックスの相手としては、申し分が無かった。
最初は男同士と言うこともあってややぎこちない部分もあったが、だんだんと慣れてくるに従って愛撫も上手になってきた。
バーナビーが過去セックスをしたゲイの男達の中でテクニックのあった者と比べても遜色がないぐらいになってきている。
更に虎徹は、いつもバーナビーを優しく労るように抱いてきた。
肉欲に駆られた乱暴なセックスではない。
最初に包み込むように抱き締められキスをされ、バーナビーが我慢ができないと音を上げるまで、丁寧にほぐされる。
ローションを使って優しく繊細に粘膜をほぐされれば、それでなくても経験の豊富なバーナビーはそこがどうしようもないほど疼いてくる。
更には虎徹は、自分の性欲を満たすよりもバーナビーを満足させるのを主な目的にしているようだった。
バーナビーのペニスを丁寧に扱いては、興奮が高まってどうしようもなくなるまでそこを愛撫される。
もう我慢ができなくなって涙目になって強請れば、漸くそこで虎徹が自分の中に入ってくる。
絶頂の一歩手前まで高められた身体は、挿入の刺激だけでいとも簡単にイってしまい、そこから先はもう、虎徹に揺さぶられとろとろになった身体はまるで制御が効かなかった。
よがって喘いで虎徹にしがみついて、快感を思うさま貪るだけだ。
確実に自分を優しく扱ってくれる、セックスの相手がいる。
それだけでも満足できる上に、虎徹は仕事上のパートナーとしてもいい関係になっていた。
コンビとしての活動も、リズムが合い、うまく行くようになり、それに伴ってポイントも順調に稼げるようになった。
バーナビーは勿論、虎徹もポイントを着実に取れるようになったし、彼が無闇に公共物を壊すことも減った。
タイガー&バーナビーとしての人気は上昇、特にバーナビーは上がってきた。










そんな時、バーナビーの誕生日があった。
それもまた、今までに無い経験だった。
自分が知らない間に虎徹が他のヒーローたちと、自分のバースディサプライズを考えていたのだ。
それはそれで嬉しかったし、途中ハプニングがあったが結果的にはヒーロースーツの新しい機能も試せたし犯人も逮捕できた。
その出来事が契機となって、他のヒーロー達と話す機会も増えた。
トレーニングセンターなどで気軽に声を掛けたり掛けられたり、飲み物をもらったり、そんな、所謂『仲間』という感覚。
それは新鮮であり、それにまた嬉しい事でもあった。
しかし、バーナビーは嬉しく思う反面、心のどこかに微かなひっかかりを感じていた。
それは、虎徹が自分に秘密にして他のヒーロー達と親密に接していた事。
自分の誕生日のサプライズというようなプライベートな事柄まで他のヒーローに相談したり企画したりするような、そんな仲だった、という事に対してだ。
考えてみると虎徹は自分のようなルーキーではなく、10年前からヒーローをやっている大先輩である。
当然、他のヒーロー達とも親交がある。
バーナビーなんかよりもずっと他のヒーロー達と親しく接していても、おかしくはない。
バーナビーはこの間ヒーローになったばかりだ。
その前は虎徹とも、あるいは他のヒーローとも接点が無かったのだ。
虎徹が自分の誕生日を気に掛けてサプライズを考えてくれたという事自体、嬉しく思うべきものであって、そこになんらか引っかかりや違和感を感じるべきものではないとは思った。
が、そうは思っても心の中に小さな棘が突き刺ささったようだった。
何か、気に入らない。
――なんだろう。
考えてみてバーナビーは、虎徹が自分をのけものにして他のヒーローと仲良くしていたり、自分に秘密を持っていたという事が引っかかるのだと思い至った。





BACK   NEXT